建設業における原価管理とは?利益を追求するための実施方法
建設業における原価管理とは、受注金額から工事原価を差し引くことで、明確な利益を算出することです。
材料費や労務費、外注費などさまざまな費用がかかる建設業の場合、受注金額から実際にどれだけ利益が残るかを把握することは非常に重要です。
もし、材料費や労務費がかさんでしまっていると、最終的には赤字になっていたなんてことは起こりがちなため、工事原価の把握はしっかりと行うようにしましょう。
本記事では、建設業における原価管理の重要性と、効率よく原価管理するための方法について解説していきます。
目次
そもそも建設業における「原価管理」とは?
建設業における「原価管理」とは、受注金額から工事原価を差し引いて、利益を明確にすることです。
もし、正しい工事原価が把握できていないと、正確な利益が確認できずに、経営戦略を立てることができません。
理由としては、受注金額が大きくても、実は工事原価がそれ以上に高くついており、赤字だったということがあるためです。
そのため、細かく工事原価を把握して、利益を追求することは経営を行ううえで非常に重要となります。
原価管理の内訳とは
工事原価の主な内訳 | 詳細 |
---|---|
材料費 | コンクリートや木材などの建設資材 |
労務費 | 建設工事にかかった人件費 |
外注費 | 業務を委託して外部企業に支払った費用 |
経費 | 建設現場へ行くための交通費など |
工事原価を管理する場合、主に材料費・労務費・外注費・経費などを内訳として管理するのが一般的です。
実際に原価管理を行うためには、「間接労務費」や「間接経費」といった項目も計算する必要があります。
間接労務費とは、どの現場にも属さない業務にかかった労務費であり、会社を運営するために必要な事務作業などが該当します。
また、間接経費とは、ヘルメットや工具など、どの現場でも使える物品や設備の管理、維持などを対象として使われる言葉です。
間接費は、それぞれのプロジェクトの稼働割合に応じて均等に割り振られることがあり、工事原価として管理することで工事原価を算出します。
建設業で原価管理が必須と言われている3つの理由
建設業で原価管理が必須といわれている理由は、材料費の高騰や人手不足、残業時間の増加などの課題を抱えているためです。
入ってくる額よりも出ていく金額が多いと赤字になってしまうのはもちろんですが、材料費や人件費は削減しづらいものとなっています。
また、建設業では現場作業とは直接関係のない事務作業に時間がかかりすぎている傾向があります。
そのため、企業としては利益をしっかりと確保するためには、できるだけコストを削減する必要があり、原価管理は非常に重要となっています。
①ウッドショックによる材料費の高騰
経済産業省によると、木材の輸入価格は2021年には前年比の69%も上昇していると発表されています。
これは、ウッドショックによる材料費の高騰と呼ばれており、建築用木材の供給が間に合っていないため発生しています。
ウッドショックの原因は、コロナウイルスの影響により木材の輸入量が減少してしまった結果です。
国産よりも安価となる海外の木材は非常に重宝されていたため、ウッドショックにより建築コストの増加が危惧されています。
さらに、木材の確保ができないといった問題も発生してしまい、建築の着工が遅れてしまうといった課題も残されています。
国内産の木材の調達を始めている企業も多々ありますが、需要が高くなった結果、国内産であっても価格が上昇しているのが現状です。
②成り手の少なさによる人件費の高騰
一般社団法人日本建築業連合会の発行した建設業ハンドブック2021によると、建築業界では29歳以下の人材が減少しています。
これは、全産業と比較した結果、水準よりも低いとされており、55歳以上の就業者数は増加傾向にあるという結果がでています。
建築業では、ベテラン層の退職が進んでいるにも関わらず、少子化の影響もあり若年層の確保が難しくなっているのが現状です。
そのため、成り手の少なさによる人件費の高騰といった課題を持っている企業も少なくはありません。
③非効率な事務作業による残業時間の増加
総務省の発表している「令和3年通信利用動向調査の結果」では、建設業のクラウドサービス利用状況は71.7%となっています。
情報通信業や金融業、不動産業についで、全産業の中で4番目に多い普及率となっており、デジタル化は進んでいるように思えます。
しかし、「建設業での原価管理」に着目した場合は、まだまだエクセルで管理している会社が多いのが現状です。
エクセルだと、月別や年度別、現場別などで管理しないといけないため、データの重複入力やファイルを探す手間などが発生します。
非効率的な事務作業によって残業時間が増加し、工事原価を算出するための作業に原価がかかってしまっています。
原価管理は法改正の対応や人手不足の解消にもつながる
正しく原価管理を行うことで、法改正への対応が容易になり、残業の抑制や従業員の労働環境改善にもつながります。
まず、建築業における法改正は2024年4月より、時間外労働の上限規則が提供開始されるため、企業側はこれを破ってしまうと罰則を受けることになります。
そのため、従業員1人ひとりの工数管理を行い、過密スケジュールとなっているのであれば対策を行わなければなりません。
ここからは、建築業に関わる法改正への対応と、労働環境の改善について解説していきます。
建設業に関わる残業上限規制の法改正対応
- ●2024年4月より罰則付きの時間外労働の上限規則の適用開始
- 時間外労働の上限について月45時間、年360時間を原則として、臨時的な特別な事情がある場合にも上限を設定する必要があります。
- ●36協定による臨時的な特別の事情がある場合でも、上限を超える時間外労働は認められない
- ①年720時間以内
②時間外と休日労働の合計が月100時間未満
③時間外と休日労働の合計が2~6ヶ月平均でいずれも月80時間未満
④月45時間を超える特例の適用は年6回が限度 - ●罰則
- 6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金
2024年4月1日より、時間外労働の上限規制が設けられるため、建築業においても残業時間の管理は非常に重要となります。
これまで、建築業では36協定で定められている時間外労働の上限基準は適用されていませんでした。
しかし、今後は特別な事情がある場合にも上限の設定が必要となり、もし破ってしまうと罰則が科せられます。
そのため、従来のままの勤怠管理ではなく、しっかりと工数管理を行ったうえで残業時間の調整を行う必要があります。
労働環境の改善で3Kイメージを払拭
建築業では、「きつい」「汚い」「危険」を3Kという言葉で表すことがあり、あまりいいイメージを持たれていないことがあります。
そのため、労働環境の改善を速やかに行い、3Kイメージを払拭しなければ今まで以上に人材が集まらなくなってしまいます。
少子高齢化により、深刻な人材不足が起こっているため、企業としてはいいイメージとなるような改革が重要です。
そこで、ITシステムの導入を行い、手作業の業務は自動化を進めるなど、できるだけ対策を考えていく必要があります。
建設業で最も効率よく原価管理を行う方法
建築業で、最も効率よく原価管理を行うのであれば、工数管理システムの導入をおすすめします。
より厳密な原価管理を行う場合、建設現場ごとにリアルタイムで作業工数を把握し、想定よりも工事原価がかかっていたら早期段階で対策を打つ必要があります。
エクセルだと、どうしても月次に従業員の給与と作業時間を集計し、外注費や経費を足して受注金額から差し引くのでリアルタイムでの管理が困難です。
しかし、工数管理システムであれば、事前に従業員ごとの時間単価を設定すると、従業員ごとの総労働時間から労務費をすぐに自動計算してくれます。
工数管理システムとは?
そもそも工数管理システムとは、プロジェクトごとに作業時間を登録し、原価管理を効率的に行える機能を持っています。
1日にかけた工数を入力することで、どのプロジェクトにどれだけの工数や労務費がかかっているかを把握できます。
エクセルで管理をすると、フォーマットの作成や更新が必要で同時編集が難しく、集計を手作業で行わなければいけないなどの問題が起こりがちです。
しかし、工数管理システムなら、出勤簿のように現場ごとでどの作業に何時間行ったか記録をつけるだけで手軽に管理が行えます。
勤怠と工数セットの導入がおすすめ
より効率よく正確な原価管理を行いたい場合は、勤怠管理と工数管理をセットで導入できるシステムがおすすめです。
工数は、実際の勤務時間と合わせることが重要となり、もし1時間でもずれてしまうと正確な原価管理ができません。
もし、毎日2時間、準備や片付けなどの雑務を行っていて、現場作業が6時間だった場合の工数を6時間でつけてしまうと、2時間が不透明となります。
実際には、会社は8時間の給与を支払っており、その分の原価が発生しているため、実際の支払いと工数で乖離がでてしまいます。
そのため、たとえ雑務であっても、雑務という作業項目を用意してしっかり勤務時間分の工数をつけるようにしましょう。
また、勤怠管理と工数管理を別々で管理していると、実際の勤務時間と入力した工数が合っているか手作業で整合性を取る必要があります。
勤怠管理と工数管理がセットになっている製品であれば、合計の勤務時間を各作業に割り振るような工数入力が行えます。
さらに、時間が合わないとエラーを出すことができるので、整合性を取る手間をゼロにできるため、勤怠と工数管理システムの2つを導入するのがおすすめです。
建設業で勤怠と工数をシステム化した場合の運用例
建築業で勤怠と工数をシステム化した場合、スマートフォンで現場から出退勤の打刻を行えるようになります。
さらに、登録されている作業時間から作業工数を割り振れるようになり、合計時間を適切に工数として管理できます。
また、管理者は作業工数をリアルタイムで把握できるため、作業の遅延が起きている箇所を速やかに対処するといった運用が可能です。
そのため、勤怠と工数をシステム化することにより、手間になっていた勤怠と工数管理を同時に効率化できます。
スマートフォンで現場から出退勤の打刻
勤怠管理システムには、スマートフォン打刻の機能が搭載されているものが多いので、現場に直行したとしても、簡単に打刻できます。
なかには、GPS打刻機能によって、打刻時に位置情報を取得できるものもあるため、正確な勤怠管理を行いたい企業におすすめです。
また、残業アラート機能によって、月間の残業が40時間を超えた場合には、従業員や現場監督にアラート通知が届くように設定できます。
残業時間の可視化により、働きすぎを防止できるため、法改正への対策が比較的容易にできるようになります。
作業時間と作業工数を割り振り
退勤時には、退勤の打刻を押すときに、あらかじめ設定された作業内訳にどれだけの時間がかかったか、合計の労働時間から割り振ることができます。
スマートフォンに対応している工数管理システムであれば、パソコンがなくてもそのまま現場で操作ができるので、事務所で作業する必要はありません。
現場で作業をしている従業員の場合、工数管理のために帰社するのは非常にめんどうとなってしまい、負担が大きくかかってしまいます。
しかし、スマートフォンで作業ができれば場所を問わずに利用できるので、工数の入れ忘れも防止できるようになります。
工数管理システムで作業工数をリアルタイム把握
現場監督などの管理者は、日々の作業工数をいつでもシステムで確認できるため、リアルタイムで経営戦略を立てられます。
もし作業工数が想定を上回っている場合は、すぐに原因を調査し、作業効率化のための指導を行えます。
また、必要に応じて追加作業による見積もりの提案が行えるので、赤字になる前に対策を打つことが可能です。
建築業の場合、資材費や人件費が大きくかかってしまうため、できるだけ利益を上げられるように細かく作業工数はチェックするようにしましょう。
初めて原価管理をシステム化するときに注意すべきことは?
初めて原価管理をシステム化するのであれば、知名度や料金だけで選ばずに、複数社に相談してみることがおすすめです。
工数管理は、実際の従業員にも行ってもらう必要があるので、使い勝手の良さや従業員に合っているかどうかが非常に重要となります。
工数管理に工数がかかってしまうと、せっかく導入しても作業効率化が進まないため、必ず自社に合っているかどうか、課題を解決できるかの視点で選ぶようにしましょう。
弊社の提供するmanage 工数管理では、プロジェクトごとに作業時間を登録できるため、複数プロジェクトに携わっている従業員でも問題なく工数管理を行えます。
さらに、標準単価設定に対応しているので、従業員の給与体系に関わらずに、自動で労務費の概算が行なえます。
manage 勤怠だけでなく、他社製品の勤怠管理システムとの連携にも対応しているので、お困りの際はまずはお気軽にご相談ください。