公開日:2024/10/21
最終更新日:2024/10/21

経費精算の面倒な業務を効率化!よくある課題と効率化の方法を解説

経費精算の効率化

経費精算業務を自動化させたり、システムでの管理を強化して効率的に業務を進めたいと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
中小企業の場合、少人数の担当者で全従業員の経費精算申請書を確認するため、効率化を進めないと多くの手間がかかります。
さらに、申請内容にミスがあると差し戻しも発生してしまうので、余計な手間も発生しがちです。
本記事では、経費精算業務の効率化における対策から、失敗事例・効率化のためのポイントなど、幅広く解説していきます。

 

効率化が必要な経費精算業務とは?

経費精算業務がシステム化されていない場合、経理担当者は、申請される度に内容を確認し、不正やミスがないかをチェックするため手間がかかります。
たとえば、エクセルや手書きで申請業務がされている場合、目視によるチェックが必要で、時間がかかることが多いです。
そのため、経費精算業務をシステム化することで、業務の迅速化や正確性の向上が期待できます。

 

経費精算を効率化する方法

  • 業務フローを見直す
  • 経費精算システムを検討する
  • 従業員にマニュアルやルールを周知する

現在の課題を把握することが経費精算業務の効率化には重要なため、どの部分で経費精算が滞っているのかを確認しつつ、改善方法を検討しましょう。
たとえば、業務フローを見直し不要な作業を廃止することで、経理担当者だけでなく申請者の手間も削減できます。
手作業での業務が多い場合、経費精算システムの導入を検討することで、作業を自動化し効率化を図ることが可能です。

すでに経費精算システムを導入している場合は、そのシステムが希望する機能を備えているか、また実際に効率化が進んでいるかを再確認しましょう。
さらに、従業員にマニュアルやルールを周知することで、申請時のミスを減らし、スムーズな経費精算を実現しやすくなります。
業務全体の見直しとシステムの活用により、経費精算業務を効率的に進めることができるでしょう。

 

経費精算で効率化が必要な業務と対策

ノートパソコンとビジネスマン

経費精算で効率化が必要な業務

  • 小口現金のやりとり
  • 領収書の管理
  • 経費精算の申請方法
  • 仕訳データの入力作業

経費精算で効率化が必要となる業務は、基本的に手作業で行っていたり、管理が難しいものとなっており、対策することで効率化が期待できます。
実際に、小口現金のやり取りや領収書の管理などは、実物で扱っていると現金が合わない・領収書の台紙管理が面倒などの問題があります。
ほかには、経費精算の申請や仕訳データの入力が手作業の場合、ミスや入力の手間となるので、システム化させるなど効率化が必要です。
ここからは、経費精算で効率化が必要とされる業務と対策について、それぞれ解説していきます。

 

①小口精算の現金が合わない

小口精算を行っている場合、経理担当者は現金の出し入れから入出金の管理、出納帳への記載など、現金の管理を行います。
この過程で、小口精算の現金が合わないことが多々あり、再度入出金の確認やレシート、領収書のチェックが必要になります。
わずかな現金の差でも、1から確認するとなると非常に時間がかかり、金額がどうしても合わない場合は、盗難の可能性も考えなければなりません。
小口精算の残高確認の効率化や盗難、不正の防止のためには、現金でのやり取りを廃止し、経理担当者の負担を軽減することが望ましいです。

 

【対策】立替精算かコーポレートカードにする

小口精算を廃止して立替精算やコーポレートカードを取り入れることで、小口現金でのやり取りが不要になります。
立替精算の場合、経費はいったん従業員に立替をしてもらい、その後、経費精算申請書を出してもらうことで、翌月の給料にて精算を行います。
立替精算を取り入れると、経費精算申請書の提出が必要となりますが、小口現金でのやり取りがなくなるため、現金が合わないといった問題は起きません。

また、コーポレートカードは、会社名義のクレジットカードとなるため、小口精算や立替精算の手間を省くことが可能です。
経費として使用していい範囲など、ルールとして決めておく必要はありますが、小口現金の盗難や不正なども未然に防げます。

 

②領収書の台紙管理が面倒

領収書は一定期間保存することが法律で義務付けられているため、経費精算で提出された際には、台紙管理を行うことが一般的です。
日々多くの経費精算が行われている会社だと、領収書の台紙管理を行うだけで非常に手間となり、貼り方や保管方法を間違えると探すのにも時間がかかります。
たとえば、台紙管理の際には、領収書を日付順に並べる・台紙に日付を書く・ファイリングする際には日付順に並べるなどルールを決めます。

しかし、もしルールに沿って台紙管理ができていないと、あとで領収書を探そうと思っても探すのが困難です。
そのため、経理担当者全員がルールをしっかりと守れるようにマニュアルを周知する、もしくは、電子化させる必要があります。

 

【対策】領収書を電子化する

領収書を紙のまま保管してしまうと、文字が薄れて読めなくなる・紛失の可能性があるなどのリスクがあるため、電子化して保存するのがおすすめです。
領収書を電子化するには、AI-OCRが搭載されている経費精算システムがおすすめで、カメラで領収書を撮影するだけで利用できます。
具体的に、AI-OCRとは、AI技術を活用した文字を認識できるシステムとなっており、カメラで領収書を撮影することで記載されている文字の自動転記が可能です。
手書きの領収書の場合、読み取りが正しくできない可能性があるので、多少の手作業での修正は必要なものの、領収書の管理は非常に楽になるでしょう。

 

③申請内容のミスが多い

紙やエクセルを使った申請書では、申請内容にミスが生じやすく、経理担当者の確認作業や差し戻しによる手間が増えることが多いです。
たとえば、申請時にルールが明確でない場合や、必須項目や入力規則が決まっていない場合、従業員によって記載内容が異なります。
さらに、金額の入力ミスや領収書の添付漏れなども起こりやすく、経理担当者は確認に多くの時間を要します。
ルールやマニュアルを周知してもミスを完全に防ぐことは難しいため、ミスが起きにくい仕組みを導入することが求められます。

 

【対策】経費精算システムで効率化する

経費精算システムを導入することで、必須項目や入力規則を設定でき、手入力によるミスを大幅に削減できます。
たとえば、従業員情報や取引先、勘定科目などをマスターデータとして登録することで、入力項目を選択式にすることが可能です。
また、交通系ICカードと連携できるシステムであれば、乗車区間や電車賃をシステム上にそのまま反映できるため、交通費の入力ミスも防げます。
このように、経費精算システムを活用して手入力を減らせば、申請内容のミスも減らすことができるでしょう。

 

④仕訳データの入力に手間がかかる

従業員から提出された経費精算申請書の内容をもとに仕訳を行っていく必要があり、1件1件を目視で手入力するのには手間がかかります。
仕訳データの内容には、日付から部門、勘定科目、金額などがあり、日々多くの経費精算申請がされている場合、入力だけで長時間を要します。
また、経費によって勘定科目が異なるため、経理担当者の負担も大きくミスが起きやすくなります。
経費精算申請は、月末に集中しやすくなっているため、効率良く仕訳データの入力を自動化できるようにシステム化しましょう。

 

【対策】仕訳データを自動作成できるシステムを導入する

経費精算システムを導入することで、申請データをもとに仕訳データを自動作成でき、経理担当者の負担が軽減されます。
このとき、申請項目と勘定科目を連動させる設定をすれば、承認時に自動で仕訳データが作成されます。
また、作成された仕訳データは会計ソフトとも連携可能なため、精算後の作業も自動化が可能です。
これにより、入力ミスが防止されるだけでなく、会計ソフトへの手動転記が不要となり、負担の軽減と業務の質の向上が期待できます。

 

立替経費精算での電子取引は電子保存が必須になる

スマートフォンと電子データ

立替経費精算時に領収書を電子データで受け取っている場合は、電子保存が必須です。
一方で、紙の領収書を受け取っている場合は電子保存の義務はありませんが、スキャナ保存を行う場合は電子保存の要件に従う必要があります。
この際、スキャナ保存では、解像度やカラー画像の読み取り、タイムスタンプの付与が必須条件となっています。
また、立替経費精算を電子取引で行う場合は、電子帳簿保存法に基づいて、適切な保存方法を理解することが重要です。

 

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、2024年1月1日から改正された、領収書や請求書などの書類を電子データで保存する際の法律です。
この法律により、国税関係帳簿や決算関係書類、取引関係書類を電子的に保存でき、従来の紙による保存よりも業務の効率化やコスト削減が期待されます。
電子保存には3つの方法があり、電子取引、スキャナ保存、電子帳簿保存が認められています。
文書の種類や送受信方法によって、適切な保存方法が異なりますので、電子保存を検討する際には、自社がどの保存方法に対応するべきかをまず確認して進めましょう。

 

Web領収書などは電子取引に該当する

Webで送付・受領された領収書は、電子取引に該当し、改ざん防止のためにタイムスタンプの付与や訂正・削除履歴の保存が義務付けられています。
このため、電子取引を行う場合は、対応するシステムやパソコン、さらにはプリンターを整備する必要があります。
電子データとしてやり取りされるWeb領収書は、すべて電子取引に該当するため、法的要件を満たすシステムの導入や、それに応じた業務フローを構築することが不可欠です。
領収書を電子データとして扱うのであれば、電子取引に対応する環境を整備し、法に準拠した運用を心がけましょう。

 

経費精算の効率化でよくある失敗事例

経費精算の効率化を進める際、従業員の協力が得られない場合や、現場と経営層の間に温度差があると、成功しにくくなります。
経費精算は会社全体に関わる重要な業務であるため、経理担当者だけでなく、従業員や経営層との連携が不可欠です。
そのため、効率化を進める際には、従業員や経営者の視点を考慮して進めることが重要です。
ここからは、経費精算の効率化における失敗事例を紹介しつつ、成功するための進め方を解説します。

 

従業員が非協力的で失敗するケース

経費精算の効率化を実現するためには、新しく申請書のフォーマットを作成したり、システムを導入したりといった工夫が必要です。
しかし、従業員にルールの周知や変更のマニュアルを用意していないと、効率化は思うように進みません。
また、既存のルールをそのまま使用し、見直しを行っていないと、効率化は期待できません。
従業員目線でのルールの見直しやマニュアルの作成を進めることが重要なため、現場の声を聞きながら効率化を進めていきましょう。

 

現場と経営層の温度感に差があるケース

現場としては効率化のためにシステムの導入やルールの改善が必要でも、経営層からすると必須と見なされないことがあります。
その結果、システムの導入やルール変更を提案しても、コストがかかるといった理由で先延ばしにされがちです。
この場合、経営層が納得するように、現在どのような無駄が発生しているか、かかっている時間や人件費を換算した場合の数字を明確に共有する必要があります。
まずは現場で発生している課題をしっかりと洗い出し、対策によって得られるメリットを具体的に伝えることが重要です。

 

経費精算を効率化するために押さえるべきポイント

モニターと経費

経費精算を効率化するためには、経費精算をシステム化して手作業による入力ミスや手間を削減することが重要です。
このとき、電子データで領収書を受領する場合は、電子取引に対応する必要があり、全従業員がスムーズに対応できる環境を整えるようにしましょう。
また、現行の経費精算業務フローを徹底的に洗い出し、課題点を修正していくことも必要で、業務フローの見直しによって、プロセスの効率化を図ることが可能です。
ここからは、経費精算を効率化するために意識すべきポイントについて解説します。

 

全従業員の手間削減を意識する

経理担当だけではなく、経費精算を申請する従業員の手間が削減されるように意識することで、より効率化を進められます。
たとえば、経費精算システムを導入して必須項目や入力規則の設定を行い、プルダウンメニューからデータを選べれば、手入力を削減可能です。
システムの導入で効率化しても、従業員にとって扱いにくい場合、誤った申請が行われてしまい、結果として経理担当の負担にもなります。
そのため、実際に経費精算申請を行う従業員にとっても扱いやすいシステムなのかを考えながら、効率化を進めることが重要です。

 

業務フローの見直しを検討する

現行の業務フローを変えずに効率化を図ろうとすると、かえってフローが複雑化する可能性があります。
そのため、できるだけ業務フローを簡略化することが重要です。
まずは、よくある申請ミスや経理担当者の負担となっている部分を洗い出します。

特に、経費精算システムの導入や見直しを検討している場合には、現行の業務フローにシステムを合わせるのではなく、システムに業務フローを合わせましょう。
システムを現行フローに合わせようとすると、カスタマイズが必要になり、結果としてコストが増大する可能性があります。
まずは、業務フローを簡略化してシステムに合わせることで、効率化を進めるようにしましょう。

 

経費精算システムで必要な機能を洗い出す

経費精算システムの機能 機能説明
AI-OCR 領収書をの画像から記載されている文字をシステムへ転記できる
交通系ICカード対応 ICカードの履歴から交通費をシステムへ登録できる
クレジットカード連携 クレジットカードの明細内容をシステムへ登録できる
スマートフォン対応 スマートフォンから経費精算が行える

多くの経費精算システムには基本的な機能が共通している一方で、細かい機能には違いがありますので、自社にとって必要な機能を洗い出すことが重要です。
たとえばAI-OCRでは、領収書を電子化し電子取引に対応させたい場合には必須ですが、紙のまま運用するのであれば必要ありません。
また、交通系ICカード対応やクレジットカード連携は、頻繁に利用する機能であれば便利ですが、使用頻度が低い場合は不要です。

スマートフォン対応についても、出張が多い従業員がいる場合は効率化が進みますが、出張が少ない場合にはそれほど必要ではありません。
このように、会社によって必要な機能は異なりますので、自社の経費精算をシステム化するうえで必要かどうか、まずは洗い出しましょう。

 

経費精算システムの料金相場

お金を運ぶビジネスマン

月額費用 初期費用
3万円~(1ユーザーあたり500円~) 0円から10万円

経費精算システムの料金相場は、機能によって異なりますが、月額費用の平均は3万円から、初期費用は10万円となっています。
ただし、1ユーザーあたりの料金を出している製品も多く、この場合は1ユーザーあたり500円からとなっています。
また、初期費用はクラウド型だと0円の製品も多くあり、サポートの範囲などによって決められています。
そのため、経費精算システムを選ぶ際には、欲しい機能があるかだけでなく、サポートの範囲も含めて選ぶようにしましょう。

 

料金はカスタマイズやサポートも含めて確認する

経費精算システムの料金は、カスタマイズ性、サポート体制、会計システムとの連携性によって異なります。
カスタマイズ性が高い製品は、その分高額になる傾向がありますが、自社のニーズに合わせた機能を自由に設定できるため、導入後の満足度が得られやすいです。
また、初期費用が0円の製品もありますが、この場合、導入サポートが提供されないことが多く、マニュアルのみが配布されることがあります。
サポート体制が重要な場合は、しっかりとしたサポートがある製品を選ぶことが推奨されます。

さらに、会計システムとの連携が基本機能に含まれていない場合、オプション料金が必要となり、予想以上のコストがかかることがあります。
このように、経費精算システムの料金は、カスタマイズの自由度やサポート体制、会計システムとの連携性によって大きく異なります。
自社のニーズをよく検討し、必要な機能やサポートが含まれているかを確認したうえで、導入を決めることが重要です。

 

経費精算を効率化する最適な方法は企業によって異なる

経費精算を効率化する方法はいくつかありますが、企業によって最適な方法は異なります。
そのため、まずは自社の経費精算業務における課題点や解決したい問題を洗い出したうえで、対策を検討しましょう。
多くの企業の場合、手作業による手間や入力ミスといった課題を持っているため、経費精算システムの導入をおすすめします。

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柏倉優

Webマーケティングの経験を経て、2021年6月に株式会社ITCSへ入社。 記事の企画・執筆・デザイン・アクセス解析まで幅広く担当。 皆さんに「それが知りたかった!」と思ってもらえるような情報を提供できるよう、日々勉強しています。

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監修者

近藤敏春

会計事務所系コンサルティングファームにてクライアントの情報システム構築・導入を多数経験。 2004年COEL入社後も、基幹系・管理系のシステム導入プロジェクトにPMとして従事。 2023年12月より経営管理部長。

執筆者

柏倉優

資格:Webライティング能力検定 1級
クラウドシステムやソフトウェアの記事作成を中心としてライター歴7年・編集長歴5年の経験を積んだ後、2021年6月に株式会社COELへ入社。
現在はmanageブログの編集長として、人事・総務・経理の業務を効率化するためのお役立ち情報を発信しています。