公開日:2023/01/31
最終更新日:2024/06/13

実際に起こるタイムカードの不正打刻や改ざんの事例と効果的な対策

タイムカードの不正打刻

タイムカードによる勤怠管理だと、不正打刻・改ざんが起こりやすいため、管理を怠ってしまうと、過剰に給与を支払うといったトラブルが発生します。
もし、過剰な支払いが発生したのであれば、返還請求を行うこととなりますが、従業員への処分は慎重に行わなければなりません。
もし、事情や原因をよく調べずに処罰を科してしまうと、従業員から訴えられる可能性もあるため、なぜ起こったのかしっかりとした調査が必要です。
本記事では、タイムカードの不正打刻・改ざんが起こってしまう事例と対策についてご紹介していきます。

タイムカードで起こりやすい不正打刻のよくあるパターン

  • 同僚に打刻を押してもらう
  • 打刻せずに退勤し、残業している同僚に打刻してもらう
  • 手書きで実際とは異なる打刻時間を記入する

タイムカードによる打刻は、従業員全員のカードが打刻場所に保管されていることが多いため、本人以外による打刻が可能です。
たとえば、同僚から遅刻しそうだから代わりに打刻してくれとお願いされたからと、ほかの従業員が打刻するといったことができてしまいます。
さらに、実際は残業していないのに残業したようにも打刻できてしまい、管理者が不在のことが多い職場だと不正打刻は起こりがちです。
うまく打刻できなかったからといった理由で、手書きによる打刻時間の記入もしやすくなるので、不正打刻されないように管理を怠らないようにしましょう。

 

タイムカードの不正打刻や改ざんの事例と対策

時計とビジネスマン

タイムカード打刻を使っているけれど、実際にはどのように対策をすれば良いのか悩んでいる方も多いかと思います。
タイムカード打刻で行える不正や改ざんは、ある程度のパターンがあるため、実際の事例をもとに対策していくことが解決への近道です。
不正打刻が行われてしまうと、企業としては利益の損失につながり、従業員との信頼関係の構築にも影響を及ぼします。
ここからは、不正打刻や改ざんが起こる実際の事例と対策についてご紹介していきます。

 

同僚に打刻をしてもらう代理打刻

タイムカードの不正打刻でよくある事例は、実際には出勤していないのに同僚に自分のタイムカードを代わりに打刻してもらう代理打刻です。
タイムカード打刻では、パスワードも本人認証も必要としない手軽さがある反面、誰でも本人以外の打刻ができてしまいます。
代理打刻していたとしても、打刻者の確認が難しいといった課題もあり、不正打刻に気づきにくくなっています。
不正打刻が発生していたとしても、いつから行っていたのか把握するのは難しいため、未然に防げるような対策が必要です。

「代理打刻の防止策」
代理打刻の最も有効的な防止策は、なりすまし打刻が難しい打刻方法に変更することが一番の近道でしょう。
具体的には、ICカード打刻や生体認証打刻などの機能が備わっている勤怠管理システムがおすすめです。
従業員ごとにパソコンが支給されている場合は、1ユーザーごとにアカウントが用意されている、パソコン打刻の導入でも効果があります。

 

仕事をせずに残業だけつけるカラ残業

カラ残業は、仕事が終わっているのに定時になっても打刻せず、ある程度時間が立ってから打刻する不正行為です。
よくある事例として、終業後に「同僚と喫煙所にて談笑」「職場内で仕事とは関係ない話をする」などが挙げられます。
また、悪質なケースには、退勤時間に打刻を行わずに、一旦会社を出て時間を潰してから、会社に戻り打刻していることもあります。
退勤時間後に業務をせずに一定時間を過ごし、その後退勤するのはカラ残業に該当するため、不正行為が行われないよう対策にしましょう。

「カラ残業の防止策」
カラ残業をしている従業員は故意ではなく、「カラ残業をしている意識がなかった」というケースもあります。
そのため、打刻や残業のルールを見直すだけで残業を減らせる可能性があり、具体的には「退出・再入」の記録を義務付けることで、正確な労働時間を把握できます。
「一定時間席を外す」「仕事とは関係のない作業を行う」などの場合は、細かく記録する、残業は事前許可制にすることで、カラ残業を防止することも可能です。

 

管理者による退勤時間の改ざん

従業員の不正打刻だけでなく、管理者が行っている不正打刻では、定時にタイムカードの打刻をさせてそのまま残業をさせることがあります。
社員が自主的に行っている風潮もありますが、管理者が指示をして定時に打刻させているとなれば、企業としては大問題につながります。
実例としては、マネジメント層が退勤時間の改ざんを促し、経営層は知らずに発覚したときには取り返しのつかない問題になっているなどです。
従業員の不満や離職だけでなく、会社に対する信頼問題にも関わってくるので、管理者による不正の無い環境作りが大切となってきます。

「打刻改ざんの防止策」
打刻時間が容易に改ざんできないよう、企業としては打刻方法や労務管理について見直す必要があります。
たとえば、入退室管理を導入し、退勤時間と退出時間の差異を確認することで、不自然な打刻に気づけます。
また、パソコンのログを取得できるシステムを導入している場合は、パソコンの操作ログと退勤時間を確認することも可能です。
勤怠管理システムの中には、打刻時間を修正した際に変更履歴が一目で判断できるものもあるので、退勤時間の改ざんに気づきやすくなります。

 

タイムカードの不正打刻や改ざんが発覚したときの適切な対処法

天秤にかける人

タイムカードの不正打刻に気づいた際には、まずはなぜ起こってしまったかという原因と従業員へのヒアリングが重要です。
故意なのか過失なのかにより、処分の内容が変わってくるので、まずはしっかりとした調査を行う必要があります。
その後、過剰支払いの返還請求や、従業員への処分を行っていくのが適切な対処の流れとなります。
もし、調査不十分の状態で処分してしまうと、不適切な処分だと従業員から訴えられるケースもあるので、事前調査は必ず行うようにしましょう。

 

過剰に支給した給与の返還請求

もし、不正打刻による過剰支払いが発生していたと発覚した場合には、企業は従業員に対して給与の返還請求を行えます
もし、従業員に対して返還請求を行わずに口頭注意のみに留めてしまうと、「不正打刻しても大きな問題にならない」と思われる可能性があります。
さらに、遅刻しても通常の出勤時間で打刻しても大丈夫だと勘違いする従業員が出てきてしまうと、正確な勤務管理は行えません。
従業員のモラルの低下だけでなく、会社としても示しがつかなくなってしまうので、何らかの処分は検討しておくほうが良いでしょう。

 

不正打刻・改ざんをした従業員への処分

従業員に対する処分内容は、不正の度合いや悪質であるかどうかによって異なります。
長期間にわたって故意に不正や改ざんを行っており、残業代を偽って受け取っていた場合は、最も厳しい懲戒解雇に該当するケースがあります。
しかし、意図的に行っているような悪質なものではない場合には、残業代の返還と始末書などの処分が適切だと判断されることもあるでしょう。
社会人経験が浅い従業員の場合、不正打刻だという認識がないといった事情もあるため、一概に悪質だと決めつけずに処分を決めることが大切です。

 

不正打刻や改ざんのトラブルで押さえておきたいポイント

悩むビジネスマン

不正打刻や改ざんが起きた際に、会社としては重い処分を下したいと思っても、冷静に対処しないとかえって違法になる可能性があります。
もし、会社の労務管理や勤怠管理の方法に問題があった場合、懲戒解雇といった重い処分をしてしまうと、かえって従業員から訴えられるリスクが起こります。
そのため、懲戒解雇には悪意があるという証拠が必要となるので、証拠を集めることから始めるようにしましょう。
ここでは、実際にあった過去の判例をもとに、どのようなケースだと懲戒解雇が難しいのか、証拠集めの方法には何があるのかについてご紹介していきます。

 

会社の労務管理に問題がある場合の懲戒解雇は難しい

「労務管理に問題があった過去の判例」
●事案の詳細
虚偽の勤怠報告をしていた従業員が、会社から自主退職・懲戒解雇を命じられて退職した後、退職の撤回と復職までの期間の給与の支払いを求めて裁判を起こした。
●裁判所の判決
会社の労務管理に問題があったため、退職は不当だと会社に対して1300万円の支払いを命じた。

富士ゼロックスで実際に起きた判例に、不正打刻した従業員を解雇したことにより、従業員からかえって訴えられたケースがあります。
たしかに従業員は不正打刻しており、自身にとって都合のいい申請はしていたものの、会社を騙していたとはいえないと会社側に支払いが命じられています。

従業員の言い分が受け入れられた理由は、明確に勤怠管理のルールとして、喫煙時の長時間の離席は休憩時間にすると決められていなかったためです。
そのため、労務管理に問題があるものの、従業員を退職させるという重すぎる処分を行ってしまった富士ゼロックスは、多額の支払いを命じられました。

 

懲戒解雇する場合は証拠が必要

「証拠になり得る記録」
・会社の出入り口に監視カメラを設置する
・PCの操作ログを取得できるツールを導入する
・GPS打刻の位置情報と打刻時間を確認する
・交通系ICカードから乗車時刻を確認する

懲戒解雇をするのであれば、明確に悪意がある故意としての不正打刻だとわかる証拠を集めておく必要があります。
具体的には、会社の出入り口に設置した監視カメラで、従業員の打刻が正しいか確認できるような環境を作っておくなどです。

また、PCの操作ログを取得できるシステムを導入していた会社では、過労働による体調不良を起こした従業員がPCログをもとに裁判を起こした事例もあります。
この会社では、従業員の申請ではなく責任者による勤怠管理を行っていましたが、PCログで実際の勤怠が記録されていたため、証拠として受理されました。
PCの操作ログやGPS打刻は、証拠として認められることもあるので、従業員を監視する目的ではなく、有事のときの証拠としてデータを取れるようにしておくと良いでしょう。

参考元:【弁護士法人 咲くやこの花法律事務所】タイムカード不正打刻や手書きでの改ざん!従業員に懲戒処分すべき?

 

不正や改ざんがしにくい勤怠の打刻方法

勤怠打刻の種類 不正打刻の有効性 導入に必要なもの
タイムカード打刻 ★★★★ カードリーダー、タイムカード
共有パソコン打刻 ★★★★★ パソコン1台~
パソコン打刻 ★★★★★ 従業員全員分のパソコン
スマホ打刻(GPS機能) ★★★★ スマートフォン(社用もしくは個人用)
ICカード打刻 ★★★★ 交通系ICカード、社員証、セキュリティカードなど
生体認証打刻 ★★★★★ 指静脈認証端末

勤怠の打刻方法はいくつかありますが、不正や改ざんしにくいのは生体認証打刻となっており、ICカード打刻やスマホ打刻も比較的不正がしにくいです。
生体認証は、従業員1人ひとりの顔や指紋、指静脈といった個人特有の情報を使うので、代わりに打刻することができません。

また、ICカード打刻では、交通系ICカードや社員証に搭載されているチップを使って従業員の情報を取得しているので、譲渡されていない限り不正は難しいでしょう。
スマホ打刻も、従業員の所持している端末にインストールしているアプリやブラウザからの打刻となるため、不正打刻を防ぎやすくなっています。
勤怠管理の方法には、いくつもありますが、会社の出勤スタイルや規模に応じて、最適なものを選んでみてください。

 

勤怠管理システムの導入は無料相談を活用しよう

勤怠管理システムの導入は、従業員数・業種・出勤スタイルなどによって適切な方法を選ぶことが非常に大切です。
パソコンを使わない会社の場合、パソコン打刻の導入よりも生体認証やICカード打刻のほうがコストも掛からずに導入できます。
もし、出張が多く交通費申請も多い会社なら、交通系ICカードを使った打刻システムの導入で、実際の履歴から申請を行えるようになります。
ただ、勤怠管理システムには種類が多くあるので、何を選べば良いのか悩んだ際には、無料相談を活用して最適なものを選んでもらうのも手です。

株式会社COELの提供するmanage 勤怠では、シフト制からパート・アルバイト、時短勤務などさまざまな勤務体系に対応できます。
さらに、スマホ打刻やWebタイムレコーダー、パソコン打刻など、幅広い打刻システムもご用意しております。
どのような勤怠管理システムを選べば良いか悩んでいる方向けには、無料相談も実施していますので、ぜひ無料トライアルと合わせてご利用ください。

無料トライアルはこちら
The following two tabs change content below.

柏倉優

Webマーケティングの経験を経て、2021年6月に株式会社ITCSへ入社。 記事の企画・執筆・デザイン・アクセス解析まで幅広く担当。 皆さんに「それが知りたかった!」と思ってもらえるような情報を提供できるよう、日々勉強しています。

最新記事 by 柏倉優 (全て見る)

プリセット選択中(ブログ設定で指定した内容を参照中)

監修者

近藤敏春

会計事務所系コンサルティングファームにてクライアントの情報システム構築・導入を多数経験。2004年COEL入社後も、基幹系・管理系のシステム導入プロジェクトにPMとして従事。2023年12月より経営管理部長。
プリセット選択中(ブログ設定で指定した内容を参照中)

執筆者

柏倉優

資格:Webライティング能力検定 1級
クラウドシステムやソフトウェアの記事作成を中心としてライター歴7年・編集長歴5年の経験を積んだ後、2021年6月に株式会社COELへ入社。
現在はmanageブログの編集長として、人事・総務・経理の業務を効率化するためのお役立ち情報を発信しています。