公開日:2024/06/07
最終更新日:2024/06/07

捺印と押印の違いとは?法的効力や脱ハンコの注意点も解説

捺印と押印の違い

捺印や押印という言葉は知っているものの、ハンコを押すこと以外にどのような意味があるのか知らない方も多いのではないでしょうか?
法的効力にも違いがあるため、脱ハンコを進める際には、どのような種類の電子印鑑が必要なのか、知っておく必要があります。
本記事では、ビジネスシーンで使われる捺印・押印の違いと、法的効力の差や脱ハンコを進めるうえでの注意点を解説します。

 

捺印と押印の違いは?

捺印と押印は、どちらも書類にハンコを押す意味で使われますが、具体的な違いについて詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
捺印は自筆の署名を行った書類へ捺印することで、押印は自筆以外での記名がされた書類に対して押印をします。
本人性をどの程度担保させるかによって使い分けをされ、法的効力を持たせるのであれば、自筆による署名と捺印を使います。
押印の場合は、自筆以外で名前がすでに書かれた書面にハンコを押すため、本人性の担保というよりも閲覧したことを証明する意味合いで使われています。

 

捺印とは

捺印(なついん)とは署名捺印の省略された言葉で、書類に自筆で署名を行いハンコを押す場合に使われます。
捺印が使われる際には、本人が自筆で署名を行いハンコを押すため、本人が承諾した書面だということが明確になります。
そのため、捺印は本人証明を担保する際に使われ、業務上では高額な金額の契約時に使われるケースが多いです。
また、捺印を法的効力を持たせる意味ではなく、ただハンコを押す行為を指している場合もあり、署名捺印とは意味が異なるので混同しないようにしましょう。

 

押印とは

押印(おういん)とは、自身による署名を行っていない書類へハンコを押すことです。
本来の名前は記名押印となり、例としてはパソコンで記名した書類を印刷し、申請のためにハンコを押すなどのケースで使われます。
また、名前の彫られたゴム印を使用して記名された書類へハンコを押すことも、押印と呼ばれます。
捺印とは異なり、名前の記載がない書類にハンコのみ押すケースでも、押印の言葉が使われ、稟議書や請求書などの書類で利用されています。

 

そのほかの混同しやすい言葉

調印(ちょういん) 双方の代表が署名して印を押すこと
押捺(おうなつ) 親指に朱肉をつけて押す拇印のこと

混同しやすい言葉に調印と押捺がありますが、調印とは、社長同士が協定を結ぶ際などに使われるもので、国同士の取り決めをするシーンでも使われます。
押捺は、指紋押捺という言葉で使われており、親指に朱肉を付けて書面にハンコを押すことを意味します。
どの言葉も、書面にハンコを押すことで使われますが、法的効力をどの程度持たせるのかによって使い分けをします。

 

捺印と押印の法的効力の違い

民事訴訟法228条では、書類に印鑑が押されていることで、法的効力を持ちますが、自筆での署名があるかないかで効力が異なります。
捺印は自筆での署名にプラスしてハンコを押すため、法的効力は高くなります。
しかし、押印は自筆での記名ではないため、捺印に比べると本人性の担保がされません。
実際に、記名式の書類への押印の場合、誰でも複製できてしまい、本人以外がハンコを押せる等の理由から、やや法的効力は低くなっています。
ここでは、法的効力別で見る証拠能力の違いについて解説していきます。

 

法的効力別で見る証拠能力の違い

印鑑の法的効力の差

署名と捺印は、筆跡鑑定から本人証明が可能かつハンコが押されていることから、改ざんやなりすましが難しいため、法的効力があります。
しかし、自筆以外で記名された書類だと、本人性の担保が難しいことから、記名された書類は署名のみよりも法的効力がありません
理由は、記名は自筆ではなくパソコンで入力して印刷したり、名前の彫られた印鑑で押されたものだったりするため、作成者が本人かどうか判断が難しいためです。
そのため、本人性を担保して改ざんされないようにするのであれば、署名と捺印を用いて書類を作成するとよいでしょう。

 

捺印と押印が必要となる書類

積まれた書類

捺印と押印は、会社だけでなく実生活でも使われるもので、本人だという証明が必要な契約の際には捺印、特に証明の必要がない際には押印が使われます。
たとえば、大きな金額が動く契約や、銀行関連など、改ざんやなりすまし防止が必要な場合には捺印を利用することが多いでしょう。
そして、稟議書や決裁書、休暇申請書など、一般社員でも利用することの多い書類の場合は、押印が利用されています。
ここからは、具体的にどのような書類で捺印と押印が使われるのか、書類ごとに解説していきます。

 

捺印が使われる書類

  • 銀行関連の書類
  • 印鑑証明の必要な書類
  • 高額な取引をする際の書類

主に捺印が使われる書類は、本人確認が必要となる銀行関連の書類や、印鑑証明書の必要な書類となっています。
一般社員が捺印を使うケースはありませんが、経営陣が会社の銀行口座を開設する際や、高額になる品物を買う際に使うことが多いです。
捺印は、署名とともに使うことで法的効力も高いものとなるため、大型の取引など重要なビジネスシーンで多く使われます。
この時、ハンコの種類も書類によって異なり、銀行関連の書類なら銀行印、高額の取引の際には実印を使うようにしましょう。

 

押印が使われる書類

  • 稟議書
  • 決裁書
  • 有給・休暇申請書
  • 各種請求書

押印の場合、稟議書や決裁書などの書類に使われ、一般社員でも利用することが多いです。
たとえば、稟議書の場合備品の購入をしてもいいかと上長に伺いを立て、承認を得られれば購入ができます。
この時、誰から承認を受けたのかを押印をもらうことで把握でき、口約束ではなく手順を踏んだ上で承認をもらったと可視化されます。
押印の場合、法的効力は劣るものの、承認を受けたという事実を紙やデータとして証拠を残す意味でも利用されます。

 

押印は電子印鑑に置き換えが可能

押印は、ビジネスシーンでよく扱われる書類に使うことが多く、最近では脱ハンコとして電子印鑑に置き換えることも可能です。
押印は、運営画像をデータ化したものや電子証明書を付与したものなどで作成できるため、電子印鑑だとしても押印として認められます。
稟議書や請求書など、日常的によく使われる書類の場合、紙媒体だとなかなか申請と承認作業が進まないことがあります。
そのため、申請作業を電子化して業務効率化を進める企業も増えており、さらには国からの推奨でもあるため、問題なく電子印鑑に置き換えできます。

 

電子印鑑の種類

電子印鑑の種類

  • 印影画像をデータ化したもの
  • 印影にタイムスタンプ情報を組み込んだもの

電子印鑑には種類が2つあり、ハンコを押した際の印影画像をデータにしたものと、印影にタイムスタンプ情報を組み込んだものがあります。
印影画像をデータ化したものだと、押印と同じく本人性が担保されませんが、タイムスタンプ情報を組み込んだ印影であれば、法的効力を持ちます。
そのため、脱ハンコを進めるのであれば、ただ印影をデータ化するだけでなく、書類に応じてタイムスタンプ情報を組み込める電子印鑑を使用することが望ましいです。
ここからは、電子印鑑の法的効力について、どのような条件であれば認められるのか解説していきます。

 

電子印鑑の法的効力

2001年に施行された電子署名法により、条件を満たした電子印鑑であれば印鑑と同じ法的効力を持つとされました。
正式名称は「電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)」で、本人だと証明できる要件を満たしていれば、法的効力を持つと書かれています。
電子証明書付きの電子印鑑の場合、押印日時や本人が作成したものなのかを、検証にて確認が可能です。
そのため、電子印鑑でも法的効力を持たせるのであれば、従業員ごとにタイムスタンプなどの識別情報を付与された電子印鑑が使えるようにしましょう。

引用:デジタル庁「電子署名」

 

電子印鑑の法的効力が認められる条件

印影に電子証明書が付与されている場合のみ、法的効力は認められますが、印影のみのものだと、誰でも複製できるので法的効力はありません
細かい要件は、電子署名法第2条に定められており、書類を本人が作成したと確認でき、情報が改変されていないと確認できることと書かれています。
そのため、タイムスタンプや個人認証ができる電子印鑑を使用した場合のみ、法的効力が認められます。

個人認証ができる電子印鑑とは、電子化した書類ごとにハッシュ値を生成させ、TSA(時刻認証局)に送付してタイムスタンプを付与させた印鑑のことです。
このとき、電子書類の内容ごとにハッシュ値が変わるため、改ざん防止としても使えるセキュリティの高いものとなっています。
実際に改ざん・偽造されていないか確認するには、付与されているハッシュ値がタイムスタンプを付与した時点のものと一致するか検証することで可能です。
電子印鑑にタイムスタンプなどの電子証明書が付与されていれば、本人性の担保がされるため、法的効力が認められます。

 

脱ハンコが進められる背景

ビジネスマンとDXの文字

労働人口の減少により、ノンコア業務はできるだけ効率化したいと考える方も多いのではないでしょうか。
実際に、政府も働き方改革の一環として、書類の電子化や脱ハンコが推奨されるようになりました。
申請作業がネット上で完結できれば、出社せずに申請から承認作業が完了するため、時間を有効活用できます。
申請作業のために出社することがなくなれば、よりコア業務に従業員は注力できるため、脱ハンコは多くの企業が注目しています。

 

働き方改革により国が推奨している

デジタル時代を見据えて、働き方改革として紙による申請作業や紙での押印作業をできるだけ減らそうと国が推奨しています。
実際に、政府自体もデジタル化に向けて押印が必要な書面だとしても、脱ハンコで申請が進められるように見直しを行っています。
「経済財政運営と改革の基本方針2020(令和2年7月17日閣議決定)」に基づき、オンライン化を進めており、令和3年には8,975種類の書類がオンライン化されています。

また、2020年には新型コロナウイルスにより、出社による業務ができない会社も多く、申請業務がデジタル化していない企業だと作業に遅延が起きました。
社会的ニーズだけでなく、さまざまな事態に備えて、テレワークで業務が完結できるような環境の構築は今後重要視されるでしょう。

 

出社せずに申請ができるため業務効率化が進む

脱ハンコが進むことにより、出社せずに申請作業ができるようになるため、従業員の業務効率化が進みます。
書類を紙媒体ではなくデジタルとして作成したとしても、押印作業は手作業となると申請書を印刷してハンコを押す必要があります。
テレワークの場合は、印刷して押印を行いスキャンして申請書の提出はできますが、外出先からだと申請作業は難しいでしょう。
しかし、押印作業が脱ハンコしていれば、全てインターネット上で完結できるため、出張先からでも速やかに申請作業が行えます。
稟議書や請求書などの申請業務は、速やかに承認されることでビジネスチャンスを掴みやすくなるため、効率的に申請から承認されることは重要です。

 

労働人口の減少をカバーするためにDX化が活発化

DX化とは、デジタルトランスフォーメーションの略称で、デジタル技術を使って生活からビジネスを優位に変革させることです。
現代の日本では、少子高齢化や労働人口の減少により、多くの企業で人手不足が加速しています。
さらに、日本だけでなく世界的にもITやデジタル技術が進んでいるため、アナログ方式での業務よりも生産性のあるDXが注目されています。

アナログでしかできない業務もあるため、デジタル化できる業務は率先してDX化させて生産性を向上させることが必要です。
今後少子高齢化や労働人口の減少が進むと考えられるため、業務のデジタル化を進めて、労働の生産性向上を目指す必要があります。

 

脱ハンコはどの書類から進めるべき?

脱ハンコの優先順位

脱ハンコを進めるのであれば、電子管理できる書類で、利用頻度の高いものから着手するのがおすすめです。
脱ハンコが進んでいるものの、書類の種類によっては紙による押印が必要なものもあるため、まずは脱ハンコの対象となる書類を洗い出しましょう。
次に、従業員が脱ハンコに慣れるための時間も必要となるため、まずはスモールスタートから始めことが大切です
ここでは、脱ハンコを進める書類やスモールスタートで始めるメリットについて、解説します。

 

脱ハンコの対象となる書類と利用頻度

対象書類 利用頻度の目安
稟議書
人事評価
残業申請
有給申請
休日出勤申請
経費申請
出張申請
接待交際費申請

脱ハンコを進めるのであれば、まずは社内で使われている、押印作業が必要な申請書から初めて行くのがおすすめです。
さらに、利用頻度の高い書類から電子化させることで、これまで時間のかかっていた申請・承認作業を大幅に改善でき、業務効率化が進みます。
社内利用されている、押印が必要な書類で利用頻度の高いものだと稟議書が挙げられますが、承認されるまでに時間がかかりがちです。

上長が多忙な方の場合、稟議書を提出しても確認されるまでに時間がかかり、承認されるまでに1ヶ月かかるという会社もあります。
しかし、電子化されていれば社外からでも確認ができるようになり、隙間時間に承認作業が進められます。
複数人へ確認してもらう必要のある書類でも、同時進行で確認が可能となるので、紙での申請時よりも早く承認作業が完了します。

 

スモールスタートで進めるのがおすすめ

脱ハンコを行う際には、稟議書など承認者が多く、紙を回すのが手間になるような書類から進めるのがおすすめです。
脱ハンコを行うには対象となる書類の電子化を進める必要があり、多くの場合はシステムの導入から始めるため、スモールスタートを推奨しています。
理由としては、もともと紙で扱っていた書類を電子化するには、社内ルールの変更や導入するシステムの検討、運用するまで時間がかかります。

また、システムを導入したけれど、思ったような運用ができない・運用中にトラブルが発生してしまったとなると、最悪の場合業務に遅延が発生します。
まずはスモールスタートから始めて、トラブル発生時でも従来の方法に切り替えて業務が滞らないようにするなど、様子を見ながら進めることが大切です。

 

脱ハンコを行う際の注意点

脱ハンコの注意点

脱ハンコを行う際には、対象となる書類の電子化を進める必要があるため、ワークフローシステムの導入から始めましょう。
エクセルを使って脱ハンコを進めるのは可能ではありますが、内容の改ざんがしやすくセキュリティ的にもおすすめはできません。
そのため、まずはワークフローシステムの検討からスタートし、従業員にとって扱いやすい製品かどうか無料トライアルなどを通じて確認しましょう。
また、電子押印に法的効力を持たせるなら、電子証明書の付与できるワークフローシステムが必要となりますので、事前に欲しい機能を把握しておくことも重要です。

 

書類の電子化も同時に進める必要がある

申請書類が紙媒体・エクセルのままだと、脱ハンコしても業務効率にはつながらないため、書類の電子化も同時に進めることが必要です。
そこで、ワークフローシステムを導入することで、書類の電子化から電子押印機能まで対応できるため、効率的に脱ハンコを進められます。
ワークフローシステムであれば、各種書類のひな型がすでに用意されているものや、エクセルで作成したひな型をそのまま取り込み電子化できるものがあります。

そのため、エクセルや紙媒体で行っていた申請・承認作業と操作感が変わらずに、書類の電子化を進められます。
さらに、出社せずに申請から承認までできるため、出張の多い従業員や上司だとしても、書類を溜め込まずにさばけるようになります。

 

初めての脱ハンコだと従業員から不満が出やすい

紙やエクセルでの申請書作成に慣れている人だと、脱ハンコに意欲的ではないこともあるため、定着できるような工夫が必要です。
まずは、脱ハンコを行うことで、業務効率化が進む・承認作業が従来よりも早く終わるなど、メリットを周知しましょう。
また、従業員にとって使いやすいワークフローシステムを導入し、紙やエクセルでこれまで対応していた人でも不自由なく使える環境を提供することも重要です。
初めての脱ハンコで戸惑わないよう、マニュアルや困ったときの問い合わせ先を用意するなど、万全の態勢でスタートできるようにしましょう。

 

法的効力を持たせるなら電子証明書が必要

ワークフローシステムには、電子印鑑機能が備わっているものがあるため、書類の電子化と脱ハンコを同時に叶えられます。
具体的には、印影だけのものと、印影に押印者の名前や日付を入れられるタイムスタンプ機能の付いたものの2種類があり、書類によって使い分けが可能です。
また、法的効力を持たせるのであれば、印影に電子証明書を入れられるものを用意する必要があります。
そのため、ワークフローシステム自体に電子印鑑機能があるのであれば、どのような種類のハンコがあるのか、事前に確認が必要です。

 

捺印・押印は脱ハンコで業務効率化を進めよう

捺印・押印を脱ハンコすることで、場所を問わずに申請・承認作業が進められるようになり、より業務効率化が進みます。
さらに、電子印鑑でも電子証明書を付与することで、法的効力も持たせることができるため、これまで紙でしか処理できなかった書類も電子化できます。
これから脱ハンコを進めるのであれば、書類の電子化から電子押印機能まで搭載されている、ワークフローシステムの導入がおすすめです。

弊社の提供するワークフローシステムでは、各種申請書のひな型のご用意から、エクセルで作成したひな型を取り込み、システム上で使える機能も搭載しています。
また、電子印鑑機能も搭載されており、ログインしているアカウントに合わせて自動作成され、オリジナルの印影も登録が可能です。
ほかにも、スマートフォンからの利用もできるため、出張先でも手軽に申請書の作成または承認作業を行えます。
まずは、具体的な操作感を知りたいという方向けに、デモのご用意もありますので、脱ハンコを進めたいと検討している方はぜひお問い合わせください。

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柏倉優

Webマーケティングの経験を経て、2021年6月に株式会社ITCSへ入社。 記事の企画・執筆・デザイン・アクセス解析まで幅広く担当。 皆さんに「それが知りたかった!」と思ってもらえるような情報を提供できるよう、日々勉強しています。

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監修者

吉田薫

資格:元全日本能率連盟認定マネジメント・コンサルタント
銀行員、コンサルティングファーム、会計系FASなどを経て2021年株式会社COEL入社、経営企画室長。
これまでに戦略、業務改善、財務、情報システム、M&A、リスクマネジメント、CSRなど幅広い業務・テーマに従事。
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執筆者

柏倉優

資格:Webライティング能力検定 1級
クラウドシステムやソフトウェアの記事作成を中心としてライター歴7年・編集長歴5年の経験を積んだ後、2021年6月に株式会社COELへ入社。
現在はmanageブログの編集長として、人事・総務・経理の業務を効率化するためのお役立ち情報を発信しています。