- 「労働基準法第32条」にて1日に8時間(休憩を除く)、1週間に40時間を超えて労働させてはいけないと定められている。
- 労働安全衛生法にて、全社員(管理者を含む)の勤怠記録を、客観的に確認できる形での保管を義務付けられている。
管理部門向け|勤怠管理とは?意外と知らない勤怠管理の知識
就業時に行っている勤怠管理ですが、働いても良い時間や残業時間の上限や取得すべき有給の日数などご存知でしょうか。
勤怠管理とは、 労働基準法の第32条で定められている「法定労働時間」と企業が独自で作成している「就業規則」に則って管理 を行います。
しかし、業種や労使協定などによっては、労働基準法に記載のある「1週間40時間、1日8時間(休憩時間を除く)」に当てはまらない場合があります。
本記事では、意外と知らない勤怠管理の対象企業・従業員やチェックすべき項目など、細かい点までご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
今さら聞けない「勤怠管理」とは?
勤怠管理は、給与計算のためだけでなく、すべての社員が安心して快適に働けるように、勤怠状況を確認するためのものです。
残業時間や休日出勤が増えすぎていないかといった、社員が過労働していないかの指標にもなるため、適切な管理が求められます。
適切な管理とは、厚生労働省が定めている労働基準法に記載されている項目をクリアしているかどうかで判断ができ、必ず守らなくてはいけません。
また、勤怠管理を怠り、時間外労働の上限を超えた場合には、「半年以内の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。
勤怠管理が必要な理由
労働基準法第32条では、労働時間・休憩・休日及び年次有給休暇についての法律が記載されています。
勤怠管理では、正しく記録されていることを前提とし、 過労働になっていないか、労働時間・環境が適正に保たれているかを管理 しなくてはいけません。
また、2019年4月1日から始まった働き方改革に伴う労働安全衛生法により、客観的に確認できる勤怠記録の管理を義務付けられています。
記録した勤怠管理のデータは、3年間保管することを義務とされているため、必要に応じていつでも提出できるように管理しましょう。
勤怠管理で管理する時間
勤怠管理では、社員が実際に働いた時間である「労働時間」と、昼食などで取得した「休憩時間」を1日単位で管理しています。
労働時間は、始業から終業までの時間から休憩時間を除いた時間で管理を行い、休憩時間はその日に取得した休み時間の合計です。
労働時間と休憩時間の違いは、業務の待機時間のようにその場にいる必要があるなら労働時間で、自由に過ごせるのであれば休憩時間となります。
ここからは、労働・休憩時間についてと、その違いについて詳しくご紹介していきます。
労働時間とは
法定労働時間 | 1日に8時間(休憩を除く)、1週間に40時間 |
---|---|
所定労働時間 | 会社の定めている就業規則・雇用契約書に記載のある労働時間 |
労働基準法第32条で定められている「法定労働時間」だけでなく、会社の定めている就業規則の「所定労働時間」も労働時間とされています。
法定労働時間は、「1日に8時間(休憩を除く)、1週間に40時間」で、 所定労働時間は「就業規則・雇用契約書に記載されている時間」 です。
例えば、就業時間が9:00~18:00、休憩1時間と就業規則に書かれていたとします。
このとき、合計9時間から休憩時間1時間を差し引いた8時間が所定労働時間となり、法定労働時間である8時間にも収まっていることになります。
残業や休日出勤など、法定労働時間を超えて勤務した場合には、「法定外時間外労働」として割増料金で支払いが行われます。
ただし、所定労働時間が7時間の会社だと、最初の1時間の残業は 「法定内時間外労働」として割増ではなく通常の支払い 金額で支払われます。
もし、所定労働時間が9:00~17:00の7時間で、2時間の残業をした場合、17:00~18:00の最初の1時間は割増の支払いにはなりません。
しかし、18:00~19:00の1時間は割増での残業代が支払われることになります。
休憩時間とは
「労働基準法第34条における休憩時間の取得義務」
労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
休憩時間は、 労働時間が6時間を超える場合には45分、8時間を超える場合には少なくても1時間取得 しなくてはいけません。
休憩時間はどのタイミングでも問題なく、小分けで休憩を取得するのも、法律的には問題ありません。
ただし、休憩時間は自由に過ごせるようにする必要があり、就業規則のルールを守りつつ、休憩を取ることになります。
基本的に、休憩は事業毎に一斉に取得しなくてはいけませんが、労働組合、もしくは労働者の過半数の書面がある場合にはバラバラでの休憩もOKです。
ただし、サービス業や運送業など、事情により途中休憩ができない業種の場合は、労使協定を締結することで一斉休暇を取らなくてもいいとされています。
労働時間と休憩時間の違いはどう判断する?
- ●「労働時間」に該当する実際のケース
- 就業時間外で受講する研修の場合、「業務に必要不可欠のものであれば労働時間」とされています。
- ●「休憩時間」に該当する実際のケース
- 業務を行っておらず、作業の指示待ちといった手待ち時間ではない場合は、休憩時間です。
労働時間とは、就業時間内(休憩時間を除く)と残業・休日出勤など、業務を行っている時間のすべてのことを指します。
就業時間外の研修の場合、業務を行ううえで必須のものであれば労働時間となります。
ただし、任意の研修で業務に関係のないものであれば、労働時間には含まれないので注意してください。
また、業務を行っておらず、次の業務の指示待ち・手待ち時間でない場合は休憩時間となります。
勤怠管理の対象になる企業・従業員は?
勤怠管理は、基本的にはほとんどの企業・従業員が対象となりますが、対象外となるケースもあります。
労働基準法の41条で適用外とされている農業・水産業の場合、勤怠管理は適用外とされています。
また、管理監督者・機密事務取扱者といった特殊な業務を行っている従業員も、勤怠管理の適用外です。
ここからは、勤怠管理の対象・対象外となる企業や従業員について詳しくご紹介していきます。
勤怠管理の対象となる企業
勤怠管理の対象となる企業は、労働基準法に記載されている、労働時間の規定に適用されるすべての事業です。
一般的な会社のほとんどが適用されるので、基本的には対象として覚えておくとよいでしょう。
ただし、労働基準法第41条で適用外とされている、 農業・水産業は、天候に応じて業務の状況が左右されるため、適用外 とされています。
そのため、自然の影響を受けやすい業種は、固定の労働時間では業務ができないため、勤怠管理の適用外として扱われます。
勤怠管理の対象となる従業員
労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除くすべての労働者です。
勤怠管理の対象となる従業員は、ガイドラインにて記載されており、基本的に雇われている従業員は該当します。
また、労働基準法第41条に定められている、管理監督者といった規定時間内だけで業務が完了できない役職の場合、勤怠管理は対象外とされています。
これは役職のことではなく、 業務として管理監督者をしている従業員に当てはまる ものです。
ただし、労働安全衛生法の第66条の8の3にて、事業者は労働者の労働時間を把握しなければならないと記載されています。
勤怠管理の対象外であるものの、労働時間の把握は必要なため、勤怠管理はつけておくようにしましょう。
「その他対象外となる従業員」
- 機密事務取扱者
- 農林水産業に関わる従業員
- 監視業務を行っている従業員(労働基準監督署から許可を得ているもの)
勤怠管理でチェックすべき項目
項目 | 内容 |
---|---|
勤怠管理 | 出勤、欠勤、遅刻、早退、休出 出退勤時間、労働時間、休憩時間 |
残業管理 | 時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間 |
休暇管理 | 有給休暇、特別休暇、代休 |
勤怠管理でチェックすべき項目には、残業や休暇といったものも含まれています。
残業時間や有給休暇については、労働基準法で定められているため、適正に管理するためにも必ずチェックしなくてはいけません。
もし、従業員の労働時間が労働基準法で定められている範囲を超えてしまった場合、罰則が科せられることがあります。
ここからは、労働基準法に記載されている内容を踏まえ、残業時間の上限や有給休暇について詳しくご紹介していきます。
残業時間の超えてはいけないライン
「 残業の上限時間は週15時間、月45時間、年間360時間 」
労働基準法第36条により、週15時間、月45時間、年間360時間を残業可能の上限として定めています。
このとき、月や年単位で労働時間を決めている変形労働時間制を取り入れている会社の場合は、月42時間、年間320時間が上限です。
ただし、災害時や緊急を要する場合には、 労働基準法第33条に則り、行政官庁の許可を受けた場合には残業を行ってもよいとされています。
労働基準法第36条に定められている時間以上に残業や休日出勤をさせたい場合には、36(サブロク)協定を会社と従業員間で結ばなくてはいけません。
36(サブロク)協定で定められている特別条項では、 残業は月45時間以上を年6回、年720時間以内であれば問題ない と決められています。
ただし、残業時間が45時間を超えても良いのは1年間を通してではなく、6ヶ月に限られているので注意が必要です。
具体的には、「時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間未満、もしくは2~6ヵ月の平均80時間以内」となっています。
残業時間の上限は、長時間労働をせず、ワークバランスを適正に保つために、働き方改革として定められているものです。
そのため、定められている範囲を超えて労働させた場合には、労働基準法第119条に則り、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。
有給の取得しなければいけない日数
「労働者は年間で最低5日間は有給を取得しなければならない」
事業者は、雇用から6ヶ月以上かつ、全労働日の8割以上を出勤しているものには、10日間の有給を与えなくてはいけません。
そして、労働者は有給休暇を取得してから1年以内に、最低5日の有給を取得する必要があり、取得できない場合には労働基準法第39条⑦に違反します。
違反した場合、労働基準法第120条の記載の罰則が科せられ、企業は1人あたり30万円以下の罰金を支払わなくてはいけません。
勤怠管理を怠ってしまい、後日多くの労働者が有給休暇を取得していないことが発覚した場合、多額の罰金を支払うことになるので注意してください。
勤怠管理の主な方法
勤怠管理システム | エクセル | タイムカード | |
---|---|---|---|
勤怠の正確性 | ◯ | △ | △ |
勤怠の正確性 | ◯ | △ | △ |
管理側の手間 | ◯ | △ | ✕ |
運用コスト | △ | ◯ | △ |
テレワークの対応 | ◯ | △ | ✕ |
法改正の対応 | ◯ | ✕ | ✕ |
勤怠管理を行うには、勤怠管理システムやエクセル、タイムカードなどを利用して行います。
勤怠管理システムは、導入に時間がかかり運用コストが毎月発生するものの、勤怠の正確性や法改正の対応がスムーズです。
運用コストでいえば、エクセルを活用した勤怠管理がベストですが、正確性に欠けてしまう可能性があります。
タイムカードは、始業・終業・休憩のタイミングで打刻する手間がかかるので、会社の働き方に合った勤怠管理を選ぶことが大切です。
勤怠管理システムを利用する
勤怠管理システムであれば、勤怠の正確性とリアルタイムでの確認ができるので、業務の効率化を両立できます。
ネット環境があればどこでも使えるのでテレワークに対応しており、さらには法改正があった際には全社員に一斉適用できます。
管理者は、勤怠管理システムで残業時間や有給休暇の取得状況も確認でき、 許可制による残業申請もリアルタイムで対応可能 です。
ただし、運用コストが毎月発生し、導入費用は1人あたり200円~500円ぐらいが相場とされています。
例えば、従業員が50人いる企業の場合、1人あたり300円の勤怠管理システムを導入したら、運用コストは月額1,5000円になります。
別途、初期費用も必要にはなりますが、この程度のコストで勤怠の正確性や手間を削減できると考えるのであれば、効率的といえます。
エクセルで管理する
関数やVBAを活用することで、自動計算はできますが、勤怠の時刻や残業時間、有給休暇は手入力なのでミスが発生しやすいのがデメリットです。
入力する労働者は、ファイルを開く手間と入力の手間があり、管理側は勤怠管理だけではなく、エクセルそのものを管理しなければいけません。
また、法改正や就業規則の変更によりルールが変わってしまうと、設定内容を1から見直す必要が出てきます。
このとき、ファイルのデータ削除やデータの損失をしないための対策も行わないといけないうえに、管理工数がかかることが懸念されます。
タイムカードで打刻する
タイムカードでの打刻は、リアルタイムで勤怠の情報を把握できないので、残業時間や有給休暇の取得状況を把握するのに時間がかかります。
毎月の集計作業も非常に大変で、労働者が多ければ多いほど、管理者側の作業が増えてしまいます。
さらに、タイムカードの導入費は、印字のみのものであれば安くて2万円~、自動集計できる性能の高いものであれば、20万円ほどです。
運用コストとしては、インク代が2,000円~4,000円ほどかかるため、勤怠管理に手間がかかるうえにコスト面でもいまいち扱いにくいでしょう。
勤怠管理システムで法令違反のリスクを防ごう
勤怠管理システムをうまく活用することで、法令違反のリスクを防ぐことができます。
有給休暇の取得状況を確認があらかじめ確認できていれば、期限ギリギリに慌てて有給を取らせるなんてことは起こりません。
職場環境の改善や、労働者の健康をまもるためにも、労働基準法に定められている範囲を適切に守るようにしましょう。
弊社が開発・提供しているクラウド勤怠管理システム「manage 勤怠」では、テレワークといったあらゆる働き方に対応可能です。
パソコン打刻やスマートフォン打刻をはじめとした10種類以上の打刻方法を搭載しています。
さらに、有給休暇取得義務に対応した機能を搭載しており、管理者だけでなく利用者も常に有給の残日数や未取得のアラートを確認できます。
他にも、過去2~6ヶ月の平均残業時間や年間残業時間といった、 残業の上限管理できる機能が搭載されている ので、法令違反のリスクも避けられます。
自由度の高い勤務体系にも適用しているので、会社にあった勤怠管理を行いたい方はぜひお問い合わせください。