公開日:2024/07/19
最終更新日:2024/07/19

ワークフローの「差し戻し」とは?実際によくあるケースと解決策を解説

申請書の差し戻し

ワークフローで使われる差し戻しとは、申請内容に不備があった際に申請者へ戻されることです。
差し戻しが頻発してしまうと、申請者や承認者の手間が増えるだけでなく、取引先にも影響が出る可能性があり、業務に支障が出てしまいます。
そのため、差し戻しが起きないような工夫を行うことは、企業にとって非常に重要です。
本記事では、ワークフローの差し戻しとはなにか、実際に良くあるケースと解決策について、詳しく解説していきます。

 

ワークフローにおける「差し戻し」とは?

差し戻しとは、承認者が申請内容を受理せずに、申請者へ申請書類を戻すことです。
差し戻しが起きる原因はいくつかあり、申請内容の抜け漏れや記入ミスなどがあげられ、頻発してしまうと業務に影響が出てしまいます。
これは、修正さえすれば再度申請できるものの、修正・再申請・チェックと手間が発生するため、決裁まで時間がかかります。
そのため、速やかに申請書を決裁するには、申請書類のフォーマットを見直したり、システムを導入したりと、差し戻しが起きにくい工夫が必要です。

 

差し戻しで発生する手間

差し戻しが発生すると、申請者は差し戻された理由を確認後、該当箇所を修正して再申請するという手間が発生します。
承認者の場合、差し戻しの理由を記載し、再申請されたら確認して承認、または再度差し戻しするなどの対応をしなければなりません。
一度だけの差し戻しでなく何度も差し戻しとなると、申請者だけでなく承認者や申請書に関係する多くの方に影響がでます。

もし、取引先に提出する書類だった場合、差し戻しが起きると決裁までに時間がかかってしまい、先方に迷惑をかける可能性があります。
よく発生している差し戻しの原因がわかれば対処できるため、どのような理由で差し戻しが起きているのか洗い出すことから始めましょう。

 

差し戻しと類似の言葉

却下と取り消し

ワークフローで申請書類を処理する際に、差し戻しの他に「申請の却下」、「申請の取り消し」という類似した言葉があります。
申請の却下は、会社として承認ができないと判断された場合や、そもそも申請する書類を間違えていた際に起こります。
次に、申請の取り消しとは、申請者が申請を取り消す際に使われるもので、承認前に書類の不備を見つけた場合などに使います。
ここでは、申請の却下と申請の取り消しという言葉について、どのようなケースで使われるのかを交えて解説します。

 

申請の却下

申請の却下が起こるケースとしては、会社として認められない場合と、申請する書類を間違えているときに起こりがちです。
たとえば、予算を大きくオーバーしていて、会社として利益を見込めない時に申請が否決となり申請を却下されます。
ほかには、購買稟議書で申請すべき内容を、契約稟議書に記載して申請していた場合、そもそも申請書類を間違えているので申請が却下されます。
ただし、この場合は否決ではないため、申請書さえ正しいものに変更すれば、再申請が可能です。

 

申請の取り消し

申請の取り消しは、承認者ではなく申請者が行うもので、不備を見つけた際に取り消しを行います。
よくあるケースでは、承認者の設定が間違えていたなどが挙げられ、承認される前であれば申請者による取り消しが可能です。
取り消しをした申請書は、ワークフローシステムであれば再利用ができるため、不備があった箇所だけ修正をし、再度申請を行えます。

 

実際に差し戻しが発生するよくある5つのケース

差し戻しの原因

よくある差し戻しの原因

  • 申請書の記入ミスや抜け漏れ
  • 申請書などのフォーマット依存によるもの
  • 内部統制の整備不足によるもの

実際に差し戻しが発生するケースとしては、申請内容にミスがあったり添付ファイルに不備があったりなどの、記入ミスや抜け漏れがあります。
次に、新しい申請書のフォーマットがあるものの、従業員が古いバージョンのフォーマットで申請したため差し戻したというケースも起こりがちです。
また、申請書作成のルールを事前に決めているものの、従業員によって申請内容に差があったり、承認経路が誤っていたりすることもあります。
ここからは、実際に差し戻しが発生するよくある5つのケースを、対策方法とともに解説していきます。

①申請内容にミスがあった

紙やエクセルで申請書を管理しているのか、ワークフローシステムで管理しているのかによって、発生しやすいミスは異なります。
紙の場合は、記載ミスがあると最初から書き直す必要があり、エクセルだと入力漏れやタイピングミスによる誤変換などが発生しやすいです。
ワークフローシステムを導入していて入力ミスが多い場合は、フリーテキスト形式のため誤入力が発生している可能性があります。
ほかにも、入力必須の設定がされておらず、空白で申請書を提出しているケースがあるため、対策するのであれば設定の見直しが必要です。

 

【対策】ミスが多い項目は選択式や入力必須にする

ワークフローシステムやエクセルであれば、ミスが多い項目は選択式や入力必須にし、ミスが起きないような工夫をしましょう。
たとえば、ワークフローシステムなら主要取引先を事前に登録できるので、取引先の会社名や住所などをプルダウンから選んだり自動入力できたりします。

入力必須項目をただルールとして周知していただけだと、何を記入すればいいのかわからないと、空欄で申請する従業員がいます。
そのため、システム上で必ず入力をしなければ申請ができないという設定をすることで、差し戻しが起きるリスクは減るでしょう。

 

②添付ファイルに不備があった

差し戻しの原因で良くあるのは、添付忘れやファイルが不足しているなどの不備によるものです。
特に、差し戻しがあった場合、申請書類の修正はできているものの、ファイルを再添付し忘れたために、さらに差し戻しが起きることがあります。

たとえば、1度目の申請の時には領収書を添付していたけど、再申請の際には領収書を添付し忘れていたというのは起こりがちです。
些細なミスだとしても、2度も差し戻しが発生してしまうため、申請書に関係する業務に遅延が起きるので対策が必要でしょう。

 

【対策】よくあるミスを周知する

添付ファイルの付け忘れというミスは、よくあるミスをしっかりと周知することが大切です。
申請に関するQ&Aをまとめた資料を、従業員がすぐに見れるような場所に置いておき、申請時にはすぐに確認できるような工夫が良いでしょう。

また、ワークフローシステムであれば、すでに決裁されているワークフローを再利用しやすいため、過去のデータを参考に申請書を作成できます。
契約書のみ添付されていて注文書・注文請書の添付がされていないなど、よくあるミスとしてしっかり周知していきましょう。

 

③稟議書のフォーマットが古かった

最新版のフォーマットではなく、古いフォーマットを利用していたため差し戻しが発生することがあります。
原因として考えられるのは、従業員自身が稟議書をよく作成するため、フォーマットを自分のパソコンに保存して使いまわしているなどです。

その結果、フォーマットが新しくなっていることに気づかず、古いフォーマットのまま稟議書を申請していることがあります。
申請者のミスであるものの、差し戻しは承認者に対しても手間になるため、古いフォーマットが使われないような工夫が必要です。

 

【対策】フォーマットの共有方法を見直す

古いフォーマットで申請書を作成されないためには、共有方法の見直しをしましょう。
ワークフローシステムでは、新しいフォーマットになったら自動でそのフォーマットが適用されるため、古いフォーマットで申請されることはありません。
しかし、エクセルから申請書を作成する場合は、毎回社内の共有フォルダから申請書を取得し、申請を行うようにルールを徹底しましょう。

また、従業員に古いフォーマットで申請させないためには、フォーマットが新しくなった場合に、従業員全員に通知を行う方法があります。
メールだけではなく朝礼や社内用の掲示板も活用するなど、確実に従業員に届く方法で新しいフォーマットになったことを周知しましょう。

 

④従業員によって申請内容に差がある

従業員によって、申請内容に差が出ることも多く、設定されている項目に適した内容が書かれていない場合があります。
たとえば、必要項目が抜けていたり、申請区分の選択が間違っているなど、決められたルールに則った記載になっていないことが挙げられます。
原因としては、項目ごとのルールがわかりづらい仕組みになっている・マニュアルが整備されていないなどです。
従業員にとって、申請がしやすく申請内容に差が出ないような工夫をすることで、差し戻しのリスクは大幅に削減できます。

 

【対策】入力規則の統一や過去の稟議を再利用する

従業員によって申請内容に差が出ないようにするためには、項目ごとに入力規則を設定し、記載する内容を明確にすることが大切です。
たとえば、ドロップダウンで選択式にしたり、金額の部分は数字以外が入力できないように制限をかけたりなど、決められたルールに則って申請できます。

また、過去の稟議書を再利用できるような仕組みにしていれば、契約更新時には日付や変更箇所のみを修正すれば申請が可能です。
マニュアルやルールを周知していても、ミスが起きる可能性があるため、入力規則の設定や過去の稟議書の再利用ができるような工夫をしましょう。

 

⑤承認者の経路が誤っていた

申請書によって承認者が変わったり、金額によって承認者が増えたりする場合、承認者を間違えてしまうことがあります。
申請者側が承認者に直接承認依頼をする場合に起こるミスで、金額や申請書によって承認者が異なる場合だと従業員は混乱するでしょう。
さらに、あらかじめマニュアルがあったとしても、毎回従業員が確認して設定はしないので、経路を確認するのは手間です。
マニュアルを確認していても、細かい承認者の経路が設定されているとミスは起こり得るため、システムの導入をおすすめします。

 

【対策】システムで承認経路を自動化させる

ワークフローシステムで承認経路を自動化させることで、申請時に毎回設定する必要がなくなるので間違えることはありません。
たとえば、金額に応じて承認者が変わり、申請書類の内容に応じて承認者が変わるのであれば、システムで設定できればミスを防げます。
承認者の経路設定は、会社によってさまざまですが、従業員が申請のたびに確認するとなると、どうしてもミスが発生します。
そのため、ワークフローシステムを導入し、申請書の種類に合わせて承認経路を自動化させると効率的になります。

 

ワークフローシステムでできる差し戻し対策

ワークフローシステム

ワークフローシステムを導入することで、差し戻しが起きにくい環境を構築でき、申請作業の多くを効率化することが可能です。
ワークフローシステムでは、フォーマットや入力規則の統一などもできるため、事前に会社ルールに合わせて設定できます。
差し戻しやミスが起きないようにあらかじめ設定できるので、申請書に関わる方達の手間が発生しません。
ここからは、ワークフローシステムを導入することでできる、差し戻し対策について解説していきます。

 

フォーマットや入力規則の統一

ワークフローシステムでは、フォーマットの設定や入力規則の統一ができるため、人為的ミスによる差し戻しを未然に防げます。
具体的には、ミスが起こりやすい項目を選択式にし、入力規則を設定することで、手入力によるミスは起こりません。
データベースと連携させれば、取引先情報をプルダウンから選べるようになり、申請者の名前はシステムにログインしている名前が自動で登録されます。
日付に関しても、申請書作成日が自動で登録されるようになるため、手入力を減らして人為的なミスを大幅に削減できます。

 

不備があるときのエラー表示

必須項目を設定できるため、入力すべき項目が空欄だった場合、解消されないと申請できないようにエラー表示を出せます。
たとえば、担当者名の入力が必須なのに空白とされていた場合、「担当者名を入力してください」と赤字などでエラーを表示可能です。
稟議書などでは、申請理由といった重要な情報を入力していても、ほかの項目は入力を忘れてしまうことが多々あります。
ワークフローシステムでは、自社に合わせて柔軟な設定ができる製品もあるため、エラー内容を自社に合わせて設定できるのか事前に確認しましょう。

 

過去の申請書の再利用による手間やミスの防止

ワークフローシステムでは、過去の申請書を再利用して新しく申請書を作成できるため、申請書作成の手間とミスを事前に防げます。
申請者は、過去の申請書の内容を参考にしつつ、日付や変更点のあった内容を変えるだけで申請作業が完了します。
また、過去に承認を得られた申請書は、ワークフローシステム内で保管ができるため、件名や日付、申請者名で検索が可能です。
ワークフローシステム内で、過去の申請書の検索から再利用までできるため、従来よりも効率的に申請できます。

 

申請書ごとの承認経路の自動設定

ワークフローシステムを活用することで、申請書類や金額に合わせて承認ルートを自動で設定できるため、従業員が申請先を確認する必要はありません。
システムによっては、承認ルートを条件によって分岐させたり、同時承認が得られないと次へ進めないようにするなど、複数の承認ルートに対応しています。
たとえば、よく使われる承認ルートは、申請内容や金額が変わったとしても、承認ルートが変わらない経路です。

次に、複数部署で承認をもらうときに便利な、営業部や総務部などと同時に承認を進められる承認ルートもあります。
さらに、金額に応じて承認ルートを変更できるものだと、5万円以下ならAの承認ルート、5万円以上ならBのルートと、自動で変更されます。
このように、申請内容に合わせてあらかじめ設定しておいた承認ルートに自動で変更されるため、差し戻しのリスクが削減されるでしょう。

 

ワークフローシステムで差し戻しを減らそう

ワークフローシステムを導入することで、手入力によるミスを未然に防げるようになり、差し戻しのリスクが減らせます。
さらに、申請画面上でも、申請者向けにメッセージが表示できるため、良くある添付ミスについても申請前に確認を促せます。
差し戻しが頻発してしまうと、申請書類にかかわる方々の業務遅延だけでなく、取引先にも影響が出る可能性があるため、対策は重要です。
ただし、ワークフローシステムのカスタマイズ性や連携性は、製品によって異なるため、欲しい機能があるかどうかは、事前に確認しましょう。

弊社の提供するワークフローシステムでは、柔軟なカスタマイズ性があるため、複雑な承認経路にも対応しています。
ほかにも、フォーマットはエクセルで作成したものをそのまま取り込むこともでき、使い慣れた方法での申請書作成も可能です。
無料トライアルや資料をご用意しておりますので、実際に製品を触ってみたいという方は、ぜひお問い合わせください。

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柏倉優

Webマーケティングの経験を経て、2021年6月に株式会社ITCSへ入社。 記事の企画・執筆・デザイン・アクセス解析まで幅広く担当。 皆さんに「それが知りたかった!」と思ってもらえるような情報を提供できるよう、日々勉強しています。

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監修者

吉田薫

資格:元全日本能率連盟認定マネジメント・コンサルタント
銀行員、コンサルティングファーム、会計系FASなどを経て2021年株式会社COEL入社、経営企画室長。
これまでに戦略、業務改善、財務、情報システム、M&A、リスクマネジメント、CSRなど幅広い業務・テーマに従事。

執筆者

柏倉優

資格:Webライティング能力検定 1級
クラウドシステムやソフトウェアの記事作成を中心としてライター歴7年・編集長歴5年の経験を積んだ後、2021年6月に株式会社COELへ入社。
現在はmanageブログの編集長として、人事・総務・経理の業務を効率化するためのお役立ち情報を発信しています。