公開日:2024/07/30
最終更新日:2024/07/30

残業時間の管理とは?課題から勤怠管理システムの導入メリットまで解説

残業時間の管理とは

残業時間は労働基準法で定められている範囲内に収める必要があり、超過した場合には罰則が科せられます。
そのため、従業員の残業を可視化し、違反を未然に防ぎたい。と考える会社は多いです。
そこで、勤怠管理システムを活用すれば、リアルタイムで残業時間を把握できるため、管理がしやすくなります。
本記事では、残業管理の必要性や課題、勤怠管理システムの活用について解説します。

 

残業時間の管理が必要とされる理由

残業時間の上限は労働基準法で定められているため、法令違反をしないように上長や管理者は従業員の状況を正しく把握し、管理しなければなりません。
また、長時間労働が続くと、従業員の健康被害や生産性の低下につながり、職場環境が悪化する可能性があります。
そのため、上長や管理者は従業員の残業状況を適切に把握し、状況に応じて残業時間を減らす対策を取らなければなりません。
ここからは、残業時間の管理が必要とされる理由について、36協定での上限と合わせて解説していきます。

 

労働基準法の範囲に抑える必要がある

「36協定を締結時の上限」
  • 原則、「月45時間」を超える時間外労働は年360時間まで
  • 2~6ヶ月の時間外労働の平均は80時間以下
  • 月の時間外労働、休日労働は100時間未満まで
「特別条項付き36協定を締結時の上限」
  • 月100時間、年720時間以内
  • 2~6ヶ月の時間外労働の平均は80時間以下
  • 月45時間の残業は年6回まで可能

もし、規定の上限を超過してしまうと30万円以下の罰金または6ヶ月以下の懲役が科せられます。
労働基準法は、2019年9月から大企業に、2020年4月から中小企業に改正が適用されており、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間です。
特別条項付き36協定を締結していれば、条件付きで時間外労働が可能ですが、月45時間の残業は年6回まで可能などの上限があります。
そのため、上長・管理者は従業員の残業時間を日々管理し、超過しそうな場合は人員や業務量の調整といった対策が必要です。

 

長時間労働が続くと健康被害がでる

長時間労働が続いてしまうと、過労により従業員への心身の負担が大きくなるため、健康被害が出てしまう可能性があります。
毎日のように長時間労働が続くと、従業員自身のプライベートの時間が少なくなり、睡眠時間なども確保が難しくなります。
一時的に仕事が多くなる日もあると思いますが、残業をすることが日常的になっており、管理者が状況を把握できていないとフォローも疎かになりやすいです。
最悪の場合、心身の不調や会社に対する不満により離職されてしまうため、従業員の健康を守り、モチベーションを保つためにも、残業時間の管理は非常に重要です。

 

残業時間が増えると生産性が低下する

残業時間が増えてしまい、従業員の負担が増加してしまうと、日々の疲れが蓄積して生産性が低下してしまいます。
実際に、日本は他国と比較すると「労働時間が長く生産性が低い」というデータが出ています。
年間労働時間と生産性に関する相関では、年間労働時間が1,215時間を超えた地点から、生産性がどんどん下がっていくデータが報告されています。
日本の年間労働時間は、2020年の場合は1,598時間となりますので、1,215時間以内に収めることは難しくても、生産性が低下するような残業はできるだけ削減する必要があります。
仕事とプライベートの線引きがされることで、仕事のパフォーマンスが向上するため、長時間労働が続かないように対策していきましょう。

独立行政法人労働者健康安全機構「産業保健21」の第94号 P.30

 

残業時間の管理における課題

ラップトップと時間

残業時間の管理における課題はいくつかありますが、従業員の残業量が可視化されていないため発生していることがあります。
たとえば、上長が従業員の残業時間を把握し、必要に応じて業務改善にあたろうとしても、従業員数が多いと管理しきれません。
他にも、上長自身も日々多くの業務に追われており、従業員一人ひとりの状況を正しく把握できていないケースだと、不要な残業を見逃しがちです。
従業員の現状を把握できないままだと、残業が当たり前になってしまい、働き方に合わせた残業管理ができない可能性があります。

 

従業員の残業が多くて管理が難しい

従業員の多くが日常的に残業しており、残業時間の管理をシステム化していない会社だと、上限を超えていないか確認するのが難しいです。
さらに、残業時間を管理するのは基本的に上長となりますが、上長1人に対して従業員数が多いとリアルタイムで対応するのは困難でしょう。
そういった場合に、勤怠管理システムを導入していれば、従業員の残業時間がリアルタイムで可視化され、労働時間の上限に合わせてアラートを出せるので管理がしやすいです。
上長が多忙な場合でも、アラートに合わせて従業員に現状をヒアリングしたり、業務量調整をしたりと対策がしやすくなります。

 

不要な残業をしていることがある

残業時間が多い従業員の中には、カラ残業と呼ばれる、残業代を稼ぐために不要な労働をしていることがあります。
たとえば、終業時間に打刻をせず、買い物など個人都合の用事を行ったあと、職場に戻り退勤を押すなどが挙げられます。
明確なルールを定めていない場合、不要な時間外労働がしやすい職場環境になってしまうため注意が必要です。
残業に関するルールを徹底して守られるように周知を行いつつ、打刻方法を変更したり、残業を事前申請制にしたりと対策をしましょう。

 

業務量が多く残業が当たり前になっている

会社全体で業務量が多く、残業が当たり前になっているケースや、管理者側が残業するのは悪いことではないと認識しているケースがあります。
さらに、管理者が残業を良しとしており、残業している=よく働いているといった評価をしていた場合、職場環境の改善は難しいでしょう。
これは、従業員側が残業しないと評価を得られないという意識を持ってしまう、良くない流れができてしまうためです。

適度な残業は悪いことではありませんが、生産性向上や職場環境の改善を目指すのであれば、管理者が率先して、残業を減らす取り組みを行うようにしましょう。
その結果、従業員としても不要な残業をしないよう、就業時間内に終わらせられるように意識しやすくなります。

 

働き方に合った残業管理ができていない

現代では、多様な働き方が推奨されており、在宅勤務も増えてきたため、正しい残業管理が難しいことがあります。
出社している場合は、入退室管理を導入していれば、何時に退室したのか、または休憩などで一時外出して戻ってきたのかがわかります。
そのため、残業時間の正確な把握がしやすく、実際に従業員がオフィス内にいるかどうかも、出社している場合は確認が可能です。

しかし、在宅勤務の場合だと自己申告となり、本当に業務にあたっていて残業しているのか確認が難しいのが現状です。
ほかにも、フレックスタイム制だと従業員ごとに出社・退勤時間が異なるので、上長が残業を管理しづらいケースもあります。
残業は事前申請制にし、出社・在宅・フレックスタイムでも従業員の残業を正しく管理できるよう工夫しましょう。

 

残業時間を適切に管理するための対策

残業のルール

残業時間を適切に管理するためには、まずはルールを明確に設定し従業員に守ってもらえるよう定期的に周知することが大切です。
そして、上長や管理者は、従業員の残業状況を可視化して、現在どのような課題を抱えているのかを分析し対策を行いましょう。
勤怠管理システムを導入して残業状況を可視化するだけでなく、残業を申請制にするのもおすすめです。
ここからは、残業時間が上限を超えないための対策について、解説していきます。

 

残業に関するルールを明確に設定する

ノー残業デーを作ったり、21時以降は残業を禁止したりと、残業に関するルールを明確に設定しましょう。
残業自体は業務上どうしても必要な場合もありますが、カラ残業や過度な時間外労働を防止するためには、就業時間内に業務が終わるような意識付けが大切です。
また、事前申請制を導入することで、承認されなければ残業時間が反映されないようにできるため、不要な残業を業務時間として認めない姿勢を示すことができます。
繁忙期など必要に応じて残業は必要になるため、完全に残業をしてはいけないと決めるのではなく、無理のない範囲で設定することが大切です。

 

従業員の残業状況を可視化させる

上長と勤怠管理者は、従業員の残業状況を可視化して、どの程度残業が発生しているのかを確認しましょう。
その後、残業が多い部署なら人員調整を行ったり、業務量が増えすぎ無いよう調整したり、対策を行います。
ただし、プロジェクトによっては一時的に残業が多い・スキルの必要な業務で人員調整が難しい場合もあります。
残業時間の削減ばかりに目を向けるのではなく、効率化にも着手しつつ、コア業務に注力できる環境を作ることが大切です。

 

残業を事前申請制にする

残業を事前申請制にし、残業理由の記載をルール化することで、不正な残業が発生しづらくなります。
事前申請制にすると、残業をしてまで取り掛かるべき業務なのかどうかの精査と判断がしやすくなります。
理由の記載や上長などへの申請が必要なことで、従業員の残業削減への意識づけがしやすいです。
この時、申請期限が数日前や当日の午前中だけでなく、突発的な残業に対応できるよう、終業時間近くでも残業申請ができるルールが必要です。
残業が発生するときは、数日前ではなく直前のこともあるため、申請時ではなく承認後に残業が反映されるようなルールも必要となります。

 

不正な残業ができないような仕組みづくりとシステム導入をする

不正な残業ができないよう、まずは就業規則の設定や残業時のルールを明確に決め、従業員へ定期的に周知しましょう。
他には、不正な残業ができないようにPCログ管理システムを使い、長時間ログの記録がない無操作状態が頻繁に起きていないかを確認するのも有効です。
また、入退室と勤怠の両方を打刻・管理できるシステムの導入も、他の従業員のなりすましによる不正残業を防止できます。

たとえ残業を申請制にしたとしても、上長や管理者が従業員の現状を把握できていないと、サービス残業や不正な残業が発生する可能性があります。
そのため、不正な残業ができないような、従業員の残業状況を正しく管理できる仕組みが必要です。

 

勤怠管理システムでできる残業管理の方法

システムとビジネスマン

勤怠管理システムを導入することで、手間をかけずに残業時間を管理でき、法令遵守が適切に行えます。
具体的には、ペーパーレスで残業申請ができ、アラート通知や残業状況がリアルタイムで可視化されます。
また、さまざまな打刻方法が搭載されているので、たとえば社員証を使った打刻を取り入れることで、なりすましによる不正残業を防止可能です。
ここからは、勤怠管理システムを活用した残業管理の方法について、解説をしていきます。

 

①事前申請制の導入

勤怠管理システムは、ワークフロー機能が搭載されているのが一般的で、残業の事前申請を導入しやすくなっています。
紙に比べて、申請書の作成から承認までがすべてオンライン上で完結するため、やり取りの手間もかからず、速やかに申請が可能です。
また、入力規則に沿った入力ができたり、プルダウンから必要事項を選ぶこともでき、申請書作成を簡素化できます。

実際に、事前申請制を導入する際には、申請に関するルールが定められるため、毎回確認するのは手間になりがちです。
しかし、勤怠管理システムを導入することで、従業員は毎回ルールを確認しなくとも、適切に残業申請を行えます。

 

②アラート通知による残業対策

アラート通知機能を使えば、あらかじめ設定しておいた残業時間に応じて、従業員や上長、管理者へ通知を出せます。
たとえば、1ヶ月の残業時間の上限は45時間となるため、40時間に達したら従業員と直属の上司、勤怠管理者へアラート通知がいくように設定可能です。
残業時間の管理は、月40時間に達するまでは従業員自身で行いますが、45時間を超えた場合、直属の上長は6ヶ月連続で超えないよう対策する必要があります。
アラート通知機能は、残業が10時間を超えるごとに通知を出したり、メッセージを変更したりも可能で、規定の労働時間を守るうえで便利な機能となっています。

 

③リアルタイムで残業時間を管理

直属の上長や管理者は、システム上で従業員全員の残業状況をまとめて確認できるため、手間が無く効率的に残業時間を管理できます
従業員も、自分のトータルの残業時間を確認でき、残業時間が45時間を超えないように自身でも対策が可能です。
ほかにも、有給取得率も確認できるので、有給をいつまでに消化しなければならないのか明確になります。
管理者だけでなく、労務担当者の業務効率化も進むため、気づかぬうちに残業時間を超えてしまうミスも防げます。

 

④月別の残業管理

「勤怠管理システムで可視化される残業状況」

従業員名 当月の残業時間 年間の残業時間 過去2ヶ月の平均残業時間 労働基準法の範囲
Aさん 40時間 480時間 45時間 特別条項付きであれば範囲内
Bさん 30時間 350時間 40時間 36協定の範囲内
Cさん 50時間 600時間 50時間 特別条項付きであれば範囲内だが要注意
Dさん 50時間 650時間 70時間 特別条項付きであれば範囲内だがこれ以上の残業は注意

勤怠管理システムでは、従業員が月にどの程度残業しており、上限である45時間を超えた月が何回あるのかを可視化できます。
さらに、残業時間が40時間以上の人を絞り込んで一覧表示でき、36協定の残業上限を超えないように声掛けをするなど事前の対策が可能となります。
残業時間は、過去2ヶ月~6ヶ月で平均残業時間が80時間を超えられないため、月別での管理が必要です。

また、36協定の特別条項を締結している場合でも、月の残業時間が45時間を超えるのは6ヶ月までとされています。
そのため、すでに平均残業が80時間を5回超えている場合などは、勤怠管理者や上司が目視でチェックできる機能があると速やかに対策できます。

 

⑤カラ残業の防止

従業員の残業状況を可視化することで、本当に必要な残業をしているかどうか、見極めやすくなります。
カラ残業の場合、実際の業務進捗や従業員の働いている姿を確認しないと、発覚しづらくなっています。
そのため、同じプロジェクトや部署内で残業の多い従業員に声掛けをするなど、上長が定期的に業務状況を確認することが大切です。
勤怠管理システムであれば、従業員ごとの残業状況が可視化されるため、業務の進み具合を確認しやすく、カラ残業の抑制につながります。

 

勤怠管理システムで適切な残業管理をしよう

勤怠管理システムを導入することで、残業時間の管理も効率化されるため、従業員や直属の上長・管理者の手間を削減できます。
労働基準法は、時代に合わせて改正されていくため、つど適切に対応し法令遵守しなければなりません。
もし労働基準法に違反してしまうと、罰則を科せられるだけでなく対外的な会社の評判が落ち、取引などにも悪影響を及ぼします。
また、従業員が過度の残業により心身を損ねた。という事実が口コミなどを通じて広まってしまった場合には、その後の雇用や採用も難しくなるといえるでしょう。
そのため、リアルタイムで残業時間を把握できる勤怠管理システムを導入し、適切な労働環境を保てるような対策が必要となります。

弊社の提供するmanage 勤怠では、任意で残業時間の上限を設定し、アラートのメッセージも自由に変更が可能です。
さらに、残業時間が45時間を超えた月が何回あるのかも、打刻画面上に表示されるため、リアルタイムで管理しやすくなっています。
また、打刻画面上で残業の事前申請ができる機能を搭載しており、申請フォームを開く必要が無いため手間なく申請できます。
無料トライアルや資料をご用意しておりますので、まずは話を聞いてみたいという方は、ぜひお問い合わせください。

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柏倉優

Webマーケティングの経験を経て、2021年6月に株式会社ITCSへ入社。 記事の企画・執筆・デザイン・アクセス解析まで幅広く担当。 皆さんに「それが知りたかった!」と思ってもらえるような情報を提供できるよう、日々勉強しています。

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監修者

近藤敏春

会計事務所系コンサルティングファームにてクライアントの情報システム構築・導入を多数経験。 2004年COEL入社後も、基幹系・管理系のシステム導入プロジェクトにPMとして従事。 2023年12月より経営管理部長。

執筆者

柏倉優

資格:Webライティング能力検定 1級
クラウドシステムやソフトウェアの記事作成を中心としてライター歴7年・編集長歴5年の経験を積んだ後、2021年6月に株式会社COELへ入社。
現在はmanageブログの編集長として、人事・総務・経理の業務を効率化するためのお役立ち情報を発信しています。